生物学コース東城幸治教授が国土交通大臣賞を受賞

2022年9月13日
 信州大学学術研究院(理学系)東城幸治教授が、河川基金(公益財団法人 河川財団)の助成を受けて2021年度に事業完了した全研究課題(研究者・研究機関部門の103課題)のうち、最も優秀な成果をあげた研究に贈られる「国土交通大臣賞」を受賞しました。8月30日に東京(TKPガーデンシティ・プレミアム神保町)にて成果を発表するとともに授賞式が行われました。なお国土交通大臣賞(最優秀賞)は、今年新設されたもので、東城教授が最初の受賞者となりました。
【受賞研究課題】
カワネズミ糞を用いた非侵襲的DNA解析手法を駆使した保全遺伝学的研究

【概要】
 山岳渓流に生息し、イワナやヤマメといった魚類やサワガニなどの底生動物を捕食する渓流生態系の上位捕食者のカワネズミ(トガリネズミ科)を対象とした保全遺伝学的研究に取り組みました。日本固有の希少種であり、夜行性で水中で狩りが行われるため観察されることは稀ですが、女鳥羽川や薄川などには比較的高密度で生息しています。トラップで一時捕獲(生捕り)し、採血した上で放逐することが困難であることから、糞便を採取し、排泄主の遺伝子解析する技術を確立しました。加えて、次世代シーケンサーを利用して鋭敏な分子マーカー(マイクロサテライト・マーカー)を独自に開発し、糞便試料から個体識別することを可能としました。
 カワネズミの分布域を網羅するように本州広域・九州広域の渓流を巡り、カワネズミ糞を採取して遺伝子解析した結果、系統進化史が究明されました。カワネズミ属の分布域は東南アジアから東アジア地域におよび、本州が分布の北限にあたります(北海道には分布せず、四国では絶滅したとされています)。分子系統解析の結果も、九州に古い系統が残存し、次いで中国地方、中部地方、そして東北地方へと分布域を北上させながら分散してきたことが明らかとなりました。また、中部山岳域では遺伝的に大きく分化した二つの系統が二次的に接触し、分布域が重複していることも明らかになりました(二つの系統が混生するため、遺伝的多様性は高く維持されている)。

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