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生物学ユニットの澤井貴之さん(東城研究室)が第30回植生学会において、口頭発表賞を受賞しました。

2025年10月28日
2025年10月10−11日に鹿児島大学で開催された植生学会 第30回大会において、総合理工学系研究科 理学専攻 生物学ユニットの澤井貴之さん(東城研究室)が口頭発表賞を受賞しました。

【発表者・題目】
澤井 貴之・東城 幸治「火山地域における植物の個体群分布とその維持機構」

本研究では、生物種の地域的な分布や多様性の形成に関わる「非生物学的要因(環境要因)」のうち、特に火山による撹乱に着目し、渓畔林の林床に生育するネコノメソウ属(ユキノシタ科)の植物を対象に研究を行いました。研究の対象地としては、火山による撹乱の影響が大きな島原半島を選定し、火山性の地質・土壌などと植生の関係性について議論しました。なお、本研究は「令和6年度 島原半島ユネスコ世界ジオパーク学術研究奨励事業」の一環として実施した研究です。
【概要】
本研究では、島原半島内に128の調査地点を設定し、ネコノメソウ属植物の分布調査を実施したところ、独立峰である雲仙普賢岳の山頂付近と、雲仙普賢岳北部の渓谷にのみ、ネコノメソウ属植物が分布していることが明らかとなりました。この特徴的な分布について、気候モデル、気象、土壌組成、地形データをもとに解析した結果、雲仙普賢岳の山頂付近は、ネコノメソウ属植物が生育するような典型的な渓畔林ではないものの、冷涼多湿であり、さらに高頻度で発生する霧により、ネコノメソウ属植物の生育に適した環境が創生されていることが示唆されました。また、生育が確認された雲仙普賢岳北部の渓谷は、いずれも谷頭が山頂付近の分布域に接続していることが判明しました。ネコノメソウ属植物は流水による種子散布(雨滴種子散布)を行うため、撹乱の激しい島原半島の渓谷においても、山頂付近に形成された個体群から種子による分散が可能な環境下では生育環境が維持されている可能性があります。すなわち、島原半島における独特な渓畔林棲植物の分布域は、火山性地質や土壌特有の撹乱特性と、地形や気象の複合作用により形成・維持されていることが示唆されました。
本研究は、火山地域における(火山活動が)間接的に寄与した撹乱がもたらした植生(植物種群の分布と維持機構)について、重要かつ興味深い知見を提供したと言えます。
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