Pick up! 研究紹介:樋口雅彦

Pickup!研究紹介動画 ~様々な物理現象を第一原理的に解き明かしたい~

研究テーマ:第一原理計算理論の適用範囲の拡大を目指して

Q1. 研究の目的を教えて下さい。
私の研究分野は,物の性質を理論的に解き明かす物性理論と呼ばれる学問分野です。その物性理論の中でも特に,第一原理計算理論の開発を行っています。第一原理とは,経験的なモデルなどを一切用いずに,基本的な物理法則のみから物の性質を解き明かそうとする理論的な試みのことです。理想的には「人間がモデルを持ち込むことなく物理現象を説明することが望ましい」という立場で研究を行っています。
ものとしての対象は,超伝導体,磁性体,低次元物質,有機物質(生体物質)など多岐にわたります。しかしながら,現状では,第一原理計算理論で記述できる物およびそれに付随した物理現象はそれほど多いとは言えません。第一原理計算理論の適用範囲の拡大を目指して日々研究をしています。
Q2. 具体的な研究内容の詳細を教えて下さい。
一例として,超伝導体の研究についてお話します。超電導とは,物質を低温に冷やしたときに電気抵抗がゼロになる不思議な現象です。超電導の状態は温度を高くしても壊れますが,外から磁場を加えることでも壊れます。このような超電導の諸現象を第一原理的に記述する理論の開発を行っています。もう少し具体的に言うと,超電導を特徴づける物理量(超伝導電流や超電導に参加する電子の数の”ゆらぎ”など)の再現を保証した第一原理計算理論の開発を行っています。
Q3. 世界の研究と比べて,この研究の特徴は何ですか?
実は超伝導現象を第一原理的に記述することは難しく,特に外部から加えた磁場に対してどのように超電導状態が壊れていくかを第一原理的に記述することは今までなされていませんでした。我々の開発した第一原理計算理論(超電導電流密度汎関数理論と呼んでいます)が世界に先駆けてその記述に成功をしました。
Q3. 最後に,本研究の今後の見通しと,将来の目標を教えて下さい。
冒頭でも述べましたように,超伝導現象に限らず様々な物理現象を第一原理的に解き明かしていきたいと考えています。物質の光学的な性質(光の反射,屈折,吸収現象)や,磁場下で起こる物質のさまざまな不思議な現象(絶縁体での磁化の振動現象,異常ホール効果など)を第一原理的に記述する理論開発にも取り組んでいます。

研究室必須アイテム

大きなホワイトボード

ホワイトボード一面に理論式を展開し,議論する。
物性の理論研究および教育の両方において,大きなホワイトボードは欠かせません。
自然現象を記述する数式を展開するには,いくら書ける場所があっても足りないくらいです。
セミナー室には,両面の壁に広いホワイトボードが設置されており,研究室のゼミが日々繰り広げられています。

関連する研究成果

論文1 K. Higuchi, N. Matsumoto, Y. Kamijo and M. Higuchi,
"Superconducting gap and attractive interaction between electrons investigated by the current-density functional theory for superconductors", J. Phys.: Condens. Matter 33, 435602 (2021).

論文2 K. Higuchi, and M. Higuchi,
"Cluster Decomposition Principle and Two-Electron Wave Function of the Cooper Pair in the BCS Superconducting State" J. Phys. Commun. 5, 095003 (2021).

論文3 K. Higuchi, N. Matsumoto, Y. Kamijo and M. Higuchi,
"Magnetic field and temperature dependence of the superconducting gap through current-density functional theory for superconductors" Phys. Rev. B 102, 014515 (2020).
MENU