受験生向け研究紹介

宮丸 文章

理学科 物理学コース 光物性分野

おもしろい光の特性を目指して

(1) メタマテリアルによる面白い光学特性に関する研究

・メタマテリアルとは?

光は電磁波のうちのひとつです.普段我々は,空気中をまっすぐ進む電磁波しかあまり意識しませんが,実は電磁波はあらゆる物質の中をいろいろな形態(モードと呼びます)で伝搬します.この伝搬モードはこれまで物質の種類を変えることによって制御してきましたが,人工的な微細構造によっても制御することができるようになってきました.その人工的な微細構造がメタマテリアルというものです。

メタマテリアルの研究は,ここ十数年で世界的に非常に急速に研究が進められてきました。この新たな概念と発想によって,これまで自然界の物質では実現できなかった多くの光学現象が今では実現されています。その一つの例としては,負の屈折率が有名です。自然界の物質では屈折率は正の値しか取りませんが,負の値を持つメタマテリアルを作製することができます。すると,メタマテリアルに侵入した光は,通常とは反対の方向に屈折するという,一見奇妙な現象が観測されます。このように,メタマテリアルによって,光・電磁波の持つ可能性を飛躍的に広げることを目指しています。
(2)テラヘルツ電磁波の特性と応用可能性を探る研究

・テラヘルツ電磁波とは?

テラヘルツ電磁波とは,一般に"光"と言われている領域と"電波"と言われている領域のちょうど中間に位置する電磁波領域です。近年まで,この周波数領域は,光源や検出器が無かったために,未踏破電磁波領域と呼ばれていました。しかし近年のレーザー技術の急速な発展により,テラヘルツ電磁波を高強度に放射させることのできる光源が作られるようになり,急速に研究が進んでいる領域です。

・テラヘルツ電磁波で何が出来るのか?
テラヘルツ電磁波は他の電磁波には無い光学特性があり,それを利用した応用技術というものが考えられてきています。たとえば,可視光とは異なり,紙や陶器などの物質を素通りします.一方,薬品やプラスチックなどにはある特異な吸収特性を示します。これらの性質を利用して,たとえば,空港や駅において,服の下に不審なものを隠していないかをチェックするシステムも開発されています。このようなテラヘルツ電磁波の特性は,さまざまな産業分野へ応用されていくと考えられます。
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