光物性研究室 研究内容3

3. 時間壁による電磁波制御

・時間壁ってなに?

2つの異なる媒体の空間的な界面を電磁波が通過するとき,空間的な波長が変化します。これは日常生活でよく見られることで,光の屈折という現象と関係しています。

これの時間的な対応物として,その界面が時間的に現れる(時間壁)と,時間的な波長,すなわち振動周期が時間壁の前後で変化し,結果として電磁波の周波数が変化する現象が考えられます。

このような時間的な屈折は,時間変化する物理学の最も基本的な要素の一つです。

・時間壁で何ができるの?

空間壁の前後では,電磁波の波数(波長)が変化します。これは日常生活で見慣れた光景です。例えば,コップの水に指したストローが曲がって見える現象です。これは一般に屈折と呼ばれますが,これは電磁波の波長が変化したために生じます。

一方,時間壁の前後では,電磁波の周波数(周期)が変化します。これは日常生活ではあまり見かけないと思われるかもしれませんが,ゆっくりとした波動現象においては,そこまで珍しいものではありません。
その他,時間的に電磁波の存在している材料の特性を変化させると,これまであまり馴染みのなかった興味深い現象が生じます。

・具体的にはどんなもの?

具体的には,電磁波を伝搬させる導波路を用意します。電磁波が導波路内を伝搬しているときに,導波路の特性(例えば,屈折率)を変化させます。すると,屈折率の変化に応じて,電磁波の周波数やその他の特性が変化します。

このような現象は言うのは簡単ですが,実現は難しいものがあります。なぜなら,時間壁前後の電磁波のダイナミクスの観察は,超高速かつ効率的な変調が必要となるためです。しかし,それはなかなか困難なものであるという問題があります。

本研究室では,時間壁を生成する際に電磁波が存在している物質全体ではなく,物質の一部分を時間的に変調する手法を用いることで,その問題を解決しました。電磁波の周期よりも十分に短い時間間隔(フェムト秒程度)で高効率な超高速変調を行うことにより,時間壁前後における周波数変換とそのダイナミクスを時間軸に沿って観察することができています。
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