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諸先輩へのインタビュー3(大学院総合理工学系研究科 理学専攻 数学分野)

宇佐美 京介 氏

Q1. 簡単な自己紹介をお願いします

信州大学総合理工学研究所理学専攻を2021年3月に修了いたしました,宇佐美京介と申します.
大学院では佐々木先生の研究室で場の量子論について研究をしていました.
現在は社会人1年目で,国内の生命保険会社でアクチュアリー候補生として仕事に就いています.

Q2. 学部生の時に行ったアドバンスゼミ(自主ゼミ)はいかがでしたか

非常に得たものが多く,取り組んで良かったと感じています.
特に楽しかったことは,友達や先輩,先生とBBQを行ったことです.先生の主催するBBQに招待してもらい,それまでは遠い存在だった先生や院生とお酒を飲みながら交流し,研究室で過ごすことが楽しみになりました.そこでできた友達とは今でも月に1回は会っています.
また自主ゼミの目的である,「数学を学ぶということはどういうことか」を知ることができたと思います.数学書を読むことは,高校までの参考書を読むのとは違い,実はとても大変です.「数学書の読み方」は,受動的に講義を受けるだけでは身につかないことだと思います.自主ゼミを行うには多くの時間がかかりますが,その分数学の基礎的な力が身につき,授業の理解度にも良い影響を与えることとなりました.
自分の興味のある分野のセミナーを体験できる良い機会になったと思います.

Q3.4年生のゼミの内容をお聞かせください

私は場の量子論の中でもBogoliubov変換を使ったハミルトニアンの対角化について研究していました.
自主ゼミで「ヒルベルト空間と量子力学」を読み終えていたので,4年生の最初はその次の本である「フォック空間と量子場」を読み進める所からスタートしました.
卒業研究では,Bogoliubov変換がユニタリ変換である事の証明をまとめ,それを用いた変形を考えました.そのことは大学院での研究に繋がる大きな足がかりになったと感じています.
進学を決めたときには,同期が就職活動を終えていくにつれ,取り残されていく気分になり不安を感じることもありました.しかし,進学すると就職する人より2年間準備の時間があるのだということを前向きに考えて,アクチュアリーやプログラミングなど将来使える可能性のあるものを研究と平行して勉強していました.

Q4.大学院ではどのように過ごしましたか?

私の院生時代は研究室でとにかく研究に打ち込む毎日でした.授業があり4年生より時間がなかったのですが,先取り履修で4年時に単位をいくつか取得していたため,少し楽になったことを覚えています.
修士1年の夏から企業インターンに参加し就職活動を進めていきました.秋にはシンポジウムで研究内容について講演を行い,2月頃からは就職活動が本格化したため,非常にあっという間の2年間でした.
修士2年時には,佐々木先生と松澤先生との共著の論文を投稿することができました.お二方には本当に感謝しております.
慌ただしく時間は過ぎていったため,アクチュアリー試験と研究を両立できていたとは言いがたいですが,ほぼ毎日研究室に籠もり数学のことを思う存分考える事の出来る時間は,就職した今ではもうしばらくは訪れないと思います.
忙しくも楽しく数学と向き合えて,とても充実した時間でした.

Q5.アクチュアリー関連の勉強で参考になることがあれば教えてください

私がアクチュアリーを目指し始めたのは学部4年の夏頃です.
アクチュアリーという職について知ったのは2年生の時の学科ガイダンスでしたが,そのときは研究職の道を志していて,企業に勤め働くアクチュアリーには全く興味を持っていませんでした.
しかし修士卒で就職することを考えたとき,数学を使える専門職員として存在感を発揮したい,と考えてアクチュアリーを意識しました.
アクチュアリーになる為には難関試験を突破しなくてはならず,力試しのつもりで4年生の時から受験を始めました.
その中で,実際に働いている人の話を聞き,同じくアクチュアリーを志す人と情報交換を行って,いままでの専門分野とは違う分野である保険数理の世界で挑戦していこうと心に決めてアクチュアリーに絞って就職活動を行いました.
現在は経済価値や企業価値に関するチームで先輩方に助けてもらいながら仕事を行っています.

試験については,学部4年時に生保数理,修士1年時に数学,修士2年時に損保数理と年金数理に合格することができて,準会員まで残り1科目です.
アクチュアリー試験はその年によって難易度がまちまちなので,腕試しに受験してみようという方がいましたら,1年目には数学と生保数理などの2科目を勉強するといいかもしれません.
勉強については人それぞれやり方があると思いますが,私が試験合格のために意識している事は,普段の勉強では試験で満点が取れるだけの実力を養うこと,試験本番では合格点を意識して時間配分に気をつけること,です.年に1回しかない試験で本番は非常に緊張するので,普段から合格点だけ取ればいいやと考えていると失敗してしまうので注意してください.

Q6.大学院進学希望の後輩,または進学するか迷っている後輩に一言お願いします

まず,私が就職して第一に思ったことは,社会人は忙しくて自分の時間があまりない,ということです.もちろん,学生もそれなりに忙しいと思いますが,一つのことを突き詰めて考えることは学生のうちしかできないと思います.大学院生として同じように頑張る仲間達と励まし合いながら,数学のことを思う存分考えた経験は本当に貴重な事です.仕事では直接数学を用いることは少ないと思いますが,理論的にものを考える力はあらゆる業務に活かすことができます.
大学院でやりたいことがなくても,私のように2年間の時間を使って自分のしたいことが見つかるかもしれません.不安もありましたが,いろいろな面で大学院に進学して本当に良かったと感じています.
大学院への進学というせっかくの機会ですので,みなさんもぜひ一歩踏み出してみてください.
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