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諸先輩へのインタビュー2(大学院総合理工学系研究科 理学専攻 数学分野)

范 揚武 氏

Q1. 簡単な自己紹介をお願いします

信州大学総合理工学研究科・理学専攻(数学分野)修士課程4年の范揚武(はんあきたけ)です.社会人として信州大学の大学院で勉強・研究をしています.40歳半ばで大学院に進学しました.

Q2. 数学の勉強・研究を目指したきっかけを教えてください

大きくは,数学的な動機と家族の協力の2つがあります.
大学は文系に進みましたが,中学生の時から数学が好きで,20代の半ばくらいから,自分で本を買ってまた数学の勉強を始めました.かっこうよく言えば独学ですが,実のところは下手の横好きでした.
数年の間は,本に書いてあることが(自分なりに)理解できれば満足でしたが,ある時期から漠然とですが,「受け身の学習から少し踏み出して,もっと積極的な何かがしたい」と思うようになりました.そうはいっても,そのようなことが簡単にできるはずはなく,空回りの連続でしたが,気持ちの方は,途切れてはまた湧き出でることを繰り返しながらも,続いていました.この積極的に学習したいという気持ちが,数学を本格的に勉強・研究する内面的な動機になったと思います.

結婚して数年経った頃には,買ったけど力不足で読めない本が本棚に並び,また,結婚を機に自営で始めた数学教室では,自分の思うように教えられていない力不足を感じていました.そのときに妻が,「一度しかない人生だよ.そんなに数学が好きなら,大学院に行って本格的に勉強していい.今のままではただの趣味だよ.」と言ってくれました.
それまでは,大学院について真剣に調べることもしませんでしたが,妻の厳しくもうれしい言葉が,40代の私の大学院進学を実現させてくれました.

Q3. 范さんはウォームアップゼミの制度を利用しましたが,そこではどのような勉強をしましたか

先生(栗林先生)と相談して,私が少しだけ勉強したことのある位相空間を固めることから始めました.後半は,ヒルベルト空間の基礎を勉強しました.
ここでは,数学の内容だけでなく,ゼミ形式で話すということを一から教えてもらいました.限られた時間にどれだけ話せるのか,またどれだけの準備が必要かなど,体験しないとわからないことをたくさん学びました.
数学の内容だけでなく,大学院で学習するスタイルを身に着ける絶好の場だと思います.また,質問や相談があれば,先生は本当に親身になって考えてくれるのでとても良い雰囲気です.

Q4. 現在,信州大学大学院で勉強していることを教えてください

現在は,\(C^*\) 代数(ヒルベルト空間と深い関係があります)の基本書を読んでいます.ウォームアップゼミの終わりころから,読みたいと思っていた本です.なかなか読み応えがありますが,指導してくれる先生(佐々木先生)や一緒にゼミに参加してくれる先生・同僚に助けられて,とても楽しく勉強できています.

Q5. 社会人大学院生として大変なことがありましたら教えてください

第一は,やはり時間の問題だと思います.
私の場合,職業は数学教室(自営)と通信教育の講師(請負)なので,どちらかといえば柔軟にスケジュール調整しやすい状況だと思います.ただ,松本のキャンパスまでは移動に片道4時間程度かかるので,やはり半日以上が潰れてしまいます.また,通信教育の方では,教材作成の時期は忙しくなり,ゼミの準備などをする時間がなかなか作れません.
それでも,先生が親切にスケジュール調整をしてくれるおかげで,ゼミのある日でも,何とか夕方の数学教室の仕事には戻れるようにしていただいております.基本的には先生に事情を相談すれば,親切に調整をしてくれるので,無理のないスケジュールで勉強することができています.

Q6. 最初から修士4年間の予定でしたが,仕事との両立をどのようにしたのか教えてください

普段の生活では,仕事に充てる時間と勉強・研究に充てる時間の両方を確保しなければならないので,長期履修の制度(2年分の学費で4年間指導を受けることができます)を活用させてもらっています.
この制度のおかげで,無理なく仕事と勉強・研究が両立できています.

また,仕事として数学を教えているというのも要因の一つと思いますが,気が付くと,ゼミで学んだこと,先生や若い仲間たちとご飯を食べながら得たこと,あるいは大学院の雰囲気それ自体は,直接的あるいは間接的に仕事の方にも活きていました.仕事と大学院での勉強とが,一方が他方の妨げになるという対立関係ではなく,同じ方向に向かって働いてくれています.

Q7. 昨年からのコロナ禍で状況が一変しましたが,セミナーはどのように行いましたか

先生と相談して,オンラインに切り替えてセミナーを行っています.
対面と比べると,初めは,その場の空気を共有できないことによる違和感がありました.例えば,言葉や板書以外の伝達方法(ゼスチャーなど)が使えないこと,お互いの表情や反応が見えないことなどです.
他方で,オンラインはアプリなども充実していて,便利な機能がいろいろあります(ゼミに参加してくれる仲間にいろいろ教えてもらいました!).現在は,オンラインに慣れてきたという側面もありますが,用途に合った機能を使うことにより,ストレスなくゼミができています.
前述しましたが,移動に多くの時間を使っていた私には,時間の節約というメリットは大きいです.うまく活用すれば,仕事との両立に役立つと思います.

Q8. 社会人大学院生を目指す方に一言あれば,お願いいたします

自分の体験から推測しますと,社会人の場合,数学を本格に勉強したいという気持ちがあっても,いざ具体的に考えると,躊躇してしまう方もおられるかと思います.躊躇する要因の一つとして,大学院に入学した後の生活や仕事とのバランスのイメージがつかないことがあると思います.
勉強したいけど躊躇してしまっているという方には,まずは楽な気持ちで,信州大学総合理工学研究科・理学専攻(数学分野)の「ウォームアップゼミ」から始めてみることを強くお勧めします.私自身,振り返ると,ウォーアップゼミで指導していただいたことは,その後の大学院生活にとても大きく役立ってくれています.
ウォーアップゼミは,社会人大学院生を育成するための制度で,数学的に専門的な指導が受けられるのはもちろんですが,生活や仕事とのバランスをとれるように自分のペースで勉強できます.そして,ウォームアップゼミの延長上に大学院があるという感覚で,大学院での生活をイメージできました.
社会人でありながら,一緒に数学をする仲間ができるのはとても嬉しいことです.興味がある方は,是非ウォーアップゼミから始めてみてください.
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