受験生向け研究紹介

吉田 孝紀

理学科 地球学コース 地層科学分野

太古の地球を解読する

堆積岩に秘められた情報
深成岩や変成岩などの岩石が地下深部で形成されるのに対して、泥や砂、礫など堆積物、生物の骨格が集まってできあがった「堆積岩」には、その当時の地球上の表層環境や生物についての情報が秘められています。地球の歴史は約46億年に及びますが、地球表層の環境がどのように変化し、どうやって現在の地球にまでたどり着いたか、といった疑問を解明する最も重要な手がかりは、これらの堆積岩(あるいは堆積岩を起源とした変成岩)から得られています。太古の地球には,現在からは想像もつかない寒冷な時期や非常に強烈な高温期がありました。地球表層の環境はこのような大きな変動を繰り返し、その結果として現在の複雑な地球環境のシステムができあがったと言えます。

私の地質学に対する興味は以上のような観点から出発しています。特に数千万年~数億年前の地球では、酸素濃度・平均気温・気候区・大陸配置などが現在とは大きく異なり、一見すればまるで「他の惑星」のようであったと思われます。同じ地球であることには変りがないはずですが、太古の地球には地球上が全て氷で覆われるような寒冷な時期や、非常に高温な時期が繰り返していたことが分かっています。地球表層の環境はこのような大きな変動を繰り返し、その結果として現在の複雑な地球環境のシステムができあがったと言えます。このような地球史を記録しているメディアは太古の昔から連綿と作られてきた堆積岩です。その研究は地球史の解明に不可欠なものです。

三畳紀後期の大型アンモナイト

古生代末の絶滅を乗り越え、三畳紀中期には急速に発展した。採集の途中で壊してしまった。

古生代末の絶滅を乗り越え、三畳紀中期には急速に発展した。採集の途中で壊してしまった。

ネパールヒマラヤでの古生代・中生代境界の地層

赤色と白色の地層が順次堆積する。当時の海水の酸化・還元状況を反映している。

赤色と白色の地層が順次堆積する。当時の海水の酸化・還元状況を反映している。

過去から未来を知る
しかし、そうはいっても同じ地球であることには変りがないはずです。太古においても基本的には同じ地球であったのに気圏・水圏などの表層環境が大きく異なっていたのは、なぜなのでしょうか。それには、大陸配置や山脈の規模や配置、氷床の規模、海洋の循環のしやすさ、といった要因が複雑に絡み合っていることでしょう。これらの要因を見つけ出し、それぞれの関係を解明してゆくことで、太古の地球環境を作り出したメカニズムを理解することができます。そして、これからの地球環境がどのように変化してゆくのか、といった未来を予測できるかもしれません。現在のところでは、その作業は非常に複雑で不確実なものです。しかし、様々なデータを集めて過去を解き明かすことによって、未来を少しずつ知ることができると思います。

ネパールヒマラヤでのサンプリング風景

2億5千万年前(三畳紀)の海洋環境の変化を知るため、サンプリングを行う。

2億5千万年前(三畳紀)の海洋環境の変化を知るため、サンプリングを行う。

2億4千万年前(中生代三畳紀)の赤い石灰岩

アンモナイトを大量に含む。

アンモナイトを大量に含む。

2億8千万年前(古生代ペルム紀)の腕足類化石濃集層

生物が繁茂する豊な海があった。

生物が繁茂する豊な海があった。

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