受験生向け研究紹介

山田 桂

理学科 地球学コース 地層科学分野

5億年前から生き続ける小さな化石-貝形虫-

昔の地球を調べています
「貝形虫(かいけいちゅう)」って知っていますか?大きさは1mm以下で、エビやカニに近い甲殻類です。今も海や池、田んぼに生きていますが、なんと、この祖先は5億年前から続いているすごい生物なのです。東京アクアラインのPAの名前にもなっている「ウミホタル」も、貝形虫の仲間です。

大昔の砂や泥が海や湖にたまってできた地層には、その当時の海や湖に生きていた貝形虫が化石となって残っていることがあります。小さいので肉眼では分かりませんが、顕微鏡の下で見るとよく分かります。私は、この貝形虫の化石を研究しています。
上の右側の写真は地層から拾い出した貝形虫の化石を並べたものです。小さな一粒一粒が全て化石です。これを拡大して見ると、左側のように形や模様が全く違うことがわかります。
貝形虫の化石を調べると、大昔の地球の様子が分かります。例えば、昔の日本は今よりも暖かかったとか、今は浅い海がもっと深かったとか、昔の地球の様子を知ることができます。
最近では、北極の氷が大きくなったおよそ300万年前頃の海水準変動や、縄文時代から現在にかけてのモンスーンなどの気候変動に特に興味を持っています。
上の写真は島根県の中海という汽水湖の湖底にたまった堆積物を柱状に採取したものの一部です。「コア」とよびます。
数千年の時間をかけて堆積した泥の中には、過去の中海に生きていた生物の一部が保存されています。時間のメモリに沿ってこの生物を取り出し、生物に記録された過去の中海の情報を読み取れば、中海がいつ、どのような環境を経て現在に至っているのか、を知ることができます。このような研究は過去の堆積物が積み重なったあらゆる場所で可能で、世界中が研究対象になります。
道はさまざま。失敗はない。
高校生の頃の私は宇宙に興味がありましたので、宇宙を勉強出来る理学部や教育学部の地学を探しました。ところが、大学に入ってみると宇宙ははかない夢に消えました・・・というのも、宇宙を勉強するというのは、星の写真を眺めて綺麗だな〜と思っているだけではダメなことに気づいたからです。それこそ、高校では赤点ギリギリですり抜けてきた物理の公式が次々と出てくるのです。もちろん、宇宙は相変わらず好きでしたけど、それを研究したい、勉強したいというのとは少し違うことに気づいた時でした。それに、地学の授業には、野外に出て行って地層や岩石などを学ぶ「巡検」というのがたくさんあり、もともと外に出て体を動かすのが好きだった私は、そちらの方が楽しくなっていったわけです。
受験勉強は大嫌いでしたし、英語は高校に入ってとたんに嫌いになりました。物理はいつも赤点ギリギリでした。受験も大失敗でした。でも、進んだ道で興味を持ったことを選んで続け、今の仕事をしています。受験で失敗しなければこの道に来ることもなかったと思うと不思議です。自分では「失敗」だと思っていたことが、実は「失敗」ではなかったんですね。

自然の中で過ごすのが好きな方、化石や過去の地球の歴史に興味がある人、ぜひ一緒に地球学を学びましょう。
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