年次別でみる医学教育のポイント

人として

1年生

共通教育 基礎医学授業
(新入生ゼミナール、早期体験実習)

まずは医療人にふさわしい人格形成に必要不可欠なさまざまな事がらを学びます。共通教育(教養科目)が中心ですが基礎医学も含まれます。初年度から現場を体験できる早期体験実習や、グループワークの新入生ゼミナールなど、特徴的なプログラムもあります。

早期体験実習

老健施設や障害者施設を訪れて高齢者や障害を持つ方へのケアを体験します。1年生の段階から、言葉によらないコミュニケーションという医療現場では多々ある状況や、患者さんの目線で見た診療の流れを体験することで、知識レベルだけではない全人的な医療人の形成を目指します。

新入生ゼミナール

医学科と保健学科の学生が合同で行う、チーム医療について学ぶグループワークです。科、専攻を越えて13人ほどのチームを組み、ひとつの課題に取り組みます。医療現場には専攻の垣根はないということを学べる貴重な場です。
同様の授業を4年次にも実施しており、より実践的な課題にチームで取り組みます。

2年生

共通教育 基礎医学授業
(TBL、外来患者体験実習)

臨床医学を学ぶための根幹となる基礎医学の専門科目がかなり増加します。専門科目は全て必修です。グループ学習形式のTBLや、来院患者に付き添い患者目線で診療を見学する外来患者体験実習なども行います。

TBL

Team-based Learningの略で、チーム基盤型学習法ともいいます。少人数のグループを組んで行うディベート型の講義ですので、個々の生徒が積極的に授業に参加することが必要となります。具体的には、生徒たちが6人ほどのグループに分かれ、ある一つの課題に対して意見をまとめ、全体で討論します。グループ内での意見交換の過程で講義への理解が深まるとともに、現代のチーム医療に不可欠なコミュニケーション能力が涵養されます。少数の教諭でも効果的な授業が行えることから、近年欧米を中心に注目を集めている学習スタイルです。

医学生として

3年生

基礎医学授業・実習
自主研究演習

専門科目のみになります。授業と実習を通して基礎医学を徹底的に学びます。基礎医学と臨床医学の連続性を意識した授業も含まれます。また、知識偏重にならないような多彩なプログラムも用意されています。

自主研究演習

学生が選択した講座で教員による個別指導を受け、5〜6週間ほどの期間、終日研究を行うものです。先端医療に関わる先生と共に研究に打ち込むことにより、研究の面白さを体感できます。本学部では「教育」「臨床」「研究」をカリキュラムの三本柱と位置づけております。論理的思考を養い、最新医療情報を追究することは、臨床医にとって必要不可欠な素養と考えておりますので、医学研究者を志す学生だけでなく、多くの学生に体験していただきたい演習です。
国際的に活躍できる医療人を育成するために、一部教室からは海外への派遣も行っております。

4年前期

臨床医学授業・演習(ユニット講義、TBL)
共用試験(CBT、OSCE)

グループ討議形式のTBLや、それぞれの領域について集中的に講義するユニット講義など、工夫をこらした講義で臨床医学を学びます。
夏には臨床実習に進むために全国共通で実施される共用試験(CBT、OSCE)が行われます。
CBT (コンピュータ式試験)は知識面、OSCE (客観的臨床能力評価試験)は技能・態度面を評価するための試験です。

ユニット講義

それぞれの領域の疾患について、内科や外科といった講座枠を越えて教員が合同で担当して、統合的に集中講義をします。各科を横断したユニット講義により、症状別に病気を整理し、また病気別に症状を整理することが可能となるので、臨床医学の知識を体系的に学ぶことができます。

医師になるものとして

4年後期
5年前期

ベーシック(基本的)臨床実習
mid-term OSCE

実際の患者さんと接する臨床実習で、主に本学附属病院で行われます。様々なシミュレーターを使って基本的診療手法を身につけるとともに、患者さんとのコミュニケーションの取り方などを学びます。
1年間の実習終了後に、中間評価としてのmid-term (中間試験) OSCEを受験します。

5年後期
6年生

アドバンスト(実践的)臨床実習
臨床実習終了後OSCE
卒業試験

5年後期からはアドバンスト(実践的)臨床実習として「150通り」実習と選択臨床実習が行われます。学内外の希望する診療科に各4週間診療に参加して、多面的な評価を繰り返し受けることを通して臨床能力を涵養します。
2年間の実習時間を合わせると、欧米の標準期間とされる72週間に達します。
その後は臨床実習終了後OSCE、集中講義、卒業試験、そして国家試験を迎えることになります。

mid-term OSCE
臨床実習終了後OSCE

臨床実習の総括的評価として実施され、ペーパー試験の国家試験に対し、技能・態度分野を評価するために、mid-term OSCEが「中間試験」、臨床実習終了後OSCEが「最終試験」という位置づけになります。複数回のOSCEを実施している大学はまだ多くありませんが、信州大学では、包括的な臨床能力の獲得を目指し導入しています。