医学科
医学教育センター 教育・学びの特長
効率的な医学知識、技術の伝達、医療者に相応しい行動規範の修得、高い志の涵養を目標としています。
基礎医学教育
医学の分野は、大きく基礎医学と臨床医学に分かれます。臨床医学は患者さんを診療するための分野で、内科学や外科学などが含まれます。一方、基礎医学は臨床医学の基礎をなす分野で、解剖学、生理学、生化学、細菌・ウィルス学、医動物学、免疫学、病理学、薬理学が含まれます。また法律上問題となる医学的事項を取り扱う法医学や、疾病の予防や社会的な健康と増進を図る遺伝医学・予防医学、衛生学公衆衛生学も基礎医学に含まれます。
医学は幅が広く奥が深い学問です。したがって、皆さんが医師になるまでに学ばねばならない知識は膨大です。この知識を6年間で効率的に学習するためには、秩序だったカリキュラムが不可欠です。本学では、入学直後から少しずつ基礎医学の勉強を始め、3年生で基礎医学を修了できるよう綿密なカリキュラムが組まれています。
基礎医学では、ヒトの体の正常な構造や機能を支える仕組み、それが破綻して病気が生じる仕組み、そして病気を予防・治療する方法を学びます。基礎医学で扱う内容の一部は、一般の生命科学とさほど違いません。しかし医学は、人の病気を予防し、診断し、治療するという明確な目的を持った学問なので、この意味で一般の生命科学と異なります。基礎医学を修得することは、臨床医学を理解するために大変重要です。また基礎医学で学んだ生体への理解は、臨床医学の知識を実際の患者さんに適用するときにも
大変役立ちます。
このように基礎医学は、教育の面から見ると臨床医学の前段階です。しかし歴史的には、まず臨床医学ができ、次に基礎医学が発展しました。つまり基礎医学は、臨床医学だけでは解決できない問題に取り組むための先端的生命科学でもあります。本学でも多くの基礎医学者が、発症機序や治療法の分からない病気の研究に日夜取り組んでいます。本学では、皆さんにこのような基礎医学の側面についても学んでもらえるように、3年生に「自主研究演習」というカリキュラムを組んでいます。自主研究演習では、皆さんが希望する研究室に赴き、一線の研究者とともに研究をして、医学の科学としての側面を勉強します。本学の基礎医学のカリキュラムでは、知識としての基礎医学の教授のみならず、そこで学んだり体験したりしたことを自分の頭で咀嚼し、考え、生かすことのできる医師を育てることを目標にしています。
臨床医学教育
臨床医学の勉強では、病める人を救うという情熱、それに必要な知識、技能、態度、コミュニケーション能力などを身につけます。また、今は治せない、診断できない病気の解決にむかって知的に挑戦する心を養うことも大事です。このために、系統講義、ユニット講義(それぞれの領域の疾患について内科や外科といった講座枠を越えて統合的に集中講義を行う形式)、少人数での問題解決討論型実習(Team-Based Learning-Tutorial)、診療参加型臨床実習、が行われます。以下に具体的に見ていきます。
臨床医学を学んでいく過程では、それまでに学んだ基礎医学の知識、つまり身体の構造、身体の機能、それを維持するメカニズム、それらに障害が起こった場合どのような異常が起こるのか、病気の診断と薬物治療、などを存分に活用することが必要です。つまり、基礎医学と臨床医学はとても密接に結びついていますので、その双方についてしっかり身につける様、カリキュラムが組まれています。
ユニット講義(3年後期~4年前期)
臨床医学の講義の最初の部分では、患者さんの症状をどのように整理して病気の診断に結びつけるかを学びます。
これは、症状から病気を思い浮かべるという作業です。そのためには、どのような病気がどのような症状を作り出すのか、ということを正確に理解しておくことが必要です。これは、病気別に症状を整理する、ということです。そこで、それぞれの臓器(たとえば心臓、消化器など)やシステム(免疫系など)にどのような病気があるのか、それぞれの病気はどのような症状を作り出すのか、 も学んでいきます。一方で、病気の診断に必要な身体診察の方法や臨床検査の知識、病気の治療方法(非薬物療法、薬物療法、手術、放射線療法など)も身につけて行きます。患者さんとのコミュニケーションの取り方の勉強もします。
講座別の系統講義が一部行なわれていますが、臨床の知識の習得は、主としてユニット講義という形式の授業で行ないます。ユニット講義では、ある領域(例えば、消化器)について、内科、外科、 画像医学など、関連する全ての講座の教員が授業を担当し、全体を責任者がまとめます。
臨床実習(4年後期~)
4年生後期からは臨床実習が始まります。臨床実習では、各講座(臨床全科)に5-6人のグループで配属され、外来を受診した患者さんや入院している患者さんを受け持って、指導医の監督の下にコミュニケーションの取り方、身体診察、診断、治療、などについて勉強させてもらいます。現在、診療参加型臨床実習といって、学生も見学だけでなく診療チームの一員として診療に参加する、という形の臨床実習への変換が進行中です。臨床実習の一部は大学病院以外に地域の病院でも行われます。
5年生後期からは、臨床実習の総まとめとして選択制の診療参加型臨床実習が行われます。ここでは、学生は、自分が希望する診療科に、1人で、原則として4週間所属して、いわば医師の「みならい」として勉強を続けます。その後、最後の集中講義、卒業試験、国家試験への準備があって、6年間の医学部での勉強が修了します。