信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF ヒトの暑熱障害防止を目的とした選択的脳冷却機構と個人差の解明

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.14 Vol.14

 ヒトが高体温になると,顔面・頭皮の静脈血が眼角一眼静脈,導出静脈経由で頭蓋内に流れるようになる.その機序と個人差を解明する目的でこの研究を行った.健康な男子を被験者とし,頭部以外の全身を加温箱により加温した時,あるいは自転車エルゴメータにより,種々の強度の負荷運動をした時の鼓膜温(Tty),食道温(Toes),全身皮膚温(Tsk),前額の発汗量(msw)と皮膚血流量 の(Qsk),眼静脈の血流方向とその速度(Qov)を連続測定した.環境温度や体温上昇の手技如何にかかわらずmswとQskは熱負荷開始後間もなく増加したが,Qovの方向の変化(顔面から頭蓋底へ)はそれとは著しく遅れておこった.
 この変化のおきる時点のTtyは,受動的体加温によっても運動によっても同じであった.平均皮膚温と平均体温は,運動時に比べて受動的体加温で高かった.これらの結果から,ヒトの選択的脳冷却に関わる眼静脈の血流方向の逆転は,末梢の温度受容器の刺激量ではなく,中枢の温度レベルに依存しておきるものと推察した.またこの血流方向の逆転の個人差について調べた.その結果,受動的体加温では25名中18名に,60%Vo₂maxの運動では13名中10名に,負荷漸増運動では8名中6名に眼静脈血流の方向の変化が観察された炉,受動的体加温による高体温時になっても,Qovの方向の逆転のおきない被験者は, 25名中7名存在し,この機序の発現に個人差のあることが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第14巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 平下政美*1, 永坂鉄夫*2, 田辺実*2, 桜田忽太郎*2, 柴藤治*2, 平井敦夫*2
大学・機関名 *1 金沢経済大学, *2 金沢大学, *3 金沢女子短期大学

キーワード

高体温静脈血動的体加温運動選択的脳冷却