信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 実験と数値流体解析を統合したスポーツエアロダイナミクス解析システムの開発と展開研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.38 Vol.38

 要旨

 アルペンスキー競技のダウンヒルでは,最高速度が120km/hを超えることが少なくなく,空気抵抗が競技タイムに大きく影響を与えている.これまで,アルペンスキー競技の空気抵抗に関する研究では,実際のレーサーを対象に,実験風洞を用いて,滑走フォームと抗力の関係や,スーツを含むスキー用具のデザインが検討されてきた.しかし,レーサー回りの流速分布や渦構造は明らかではなかった.そこで本研究では,格子ボルツマン法を用いた数値流体解析により,クラウチング姿勢における流速(ダウンヒルレーサーの速度)と全抗力の関係を示した.さらに,数値流体解析によりダウンヒルレーサー周りの流れを可視化し,その渦構造を検討した.その結果,ダウンヒルレーサーモデルの全抗力は,流速15m/s時が27.0N,20m/sが46.2N,25m/sが74.3N,30m/sが107.6N,35m/sが144.7N,40m/sが185.8Nとなっていた.また,流れ場の可視化により,流速40m/sにおけるダウンヒルレーサーモデルの大きな抗力の,主な発生部位は,頭部,上腕部,下腿部,大腿部(含む臀部)であると考えられた.本研究では,実験と数値流体解析を統合したスポーツエアロダイナミクス解析システムの開発を試み,アルペンスキーのダウンヒルレーサーの空力解析に適用した.実験精度の向上は勿論の事,数値流体解析の精度向上も大きな課題である.それと同時に,近年,急速に発展している,ビッグデータテクノロジーや人工知能(AI)テクノロジー等の最新テクノロジーとの連携,応用も今後の重要な課題の一つと考えられる.

「デサントスポーツ科学」第38巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 浅井武, 洪性賛
大学・機関名 筑波大学

キーワード

数値流体解析抗力揚力スキー空力