第195回 第1種放射線取扱主任者講習に参加しました
実習の風景   J-PARC(大強度陽子加速器施設)にて
 2月18−22日にかけて、茨城県東海村にある日本原子力開発機構人材育成センターで行われた第1種放射線取扱主任者講習に参加しました。第1種放射線取扱主任者の免状を取得するための講習会になります。

 核医学検査や放射線治療をはじめ、放射線同位元素や放射線発生装置を使用する際は放射線取扱主任者の選任が義務付けられています。現行の法律では「放射性同位元素又は放射線発生装置を診療のために用いるときは、医師または歯科医師を主任者として選任できる」と定められており、一般診療のみに携わる状況であれば必ずしも取得する必要はありませんが、我々が普段使用している放射線についての基礎的知識を深めることができると考え、講習に参加しました(受講には別途試験に合格する必要があります)。

 講習は5日間に渡って行われ、その半分の2.5日が実習になります。8月に行われた主任者試験は基礎的な知識が多く問われましたが、今回の講習は実習がメインで、より実務的でした(医師国家試験と臨床研修に近い感覚かも知れません)。具体的な実習の内容としては、「イオン交換分離法による模擬廃液中のP-32とS-35の分離と測定」、「液体シンチレーションによるトリチウムとC-14の測定」、「ゲルマニウムγ線スペクトロメトリーを使用した空気中放射性物質濃度の測定」、「サーベイメーターの校正と空間線量率の測定」、「表面汚染密度の測定」でした。いずれの実習も勉強になりましたが、特に印象的だったのは、表面密度汚染の測定時のふき取り効率に関してです。
 その実習では管理区域などに使用されることの多い床面(ロンリウム)とステンレスの模擬板を放射性物質(P-32)で汚染させ、それをろ紙にてふき取り、そのふき取れた放射能を測定しました。同じ床面をろ紙にて6回も繰り返し拭き取りましたが、一度付着した汚染物質はなかなかとれず、平滑なロンリウムの床面でも汚染は半分以上残存する結果でした(私の行った実習では約61.1%)。ステンレスに至っては大部分(94.4%)が残存する結果でした。
 私自身も核医学検査で非密封の液状放射性同位元素を使用する機会があります。日常診療で使用している薬剤は短半減期の核種のみで、減衰による除染も期待できる面もありますが、やはり一度汚染を起こしてしまうと物理的に完全に拭き取るのは極めて困難です。そのことが具体的な数値として改めて認識でき、吸湿シートの使用や飛散を防ぐ操作の重要性を再確認しました。

 第1種放射線取扱主任者の試験勉強および講習を通じて、放射線の基礎的知識や測定技術、管理技術を勉強することができました。1週間の出張中に診療をカバーしてくださった医局員の皆様には感謝の気持ちで一杯です。今回得た知識は、またこれからの診療に役立てていきたいと思います。 (所)
閉じる
ホーム  /  教室紹介  /  日常診療  /  研修医・学生の方へ
Copyright (C) 2009 Shinshu University Hospital All Rights Reserved.