信州大学医学部・分子薬理学教室

Department of Molecular Pharmacology
Shinshu University School of Medicine

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  • 血小板由来増殖因子による合成型血管平滑筋細胞の遊走誘導の分子機構の解析
  • 骨格筋の収縮におけるL型カルシウムチャネルとジャンクトフィリンの役割
  • 幼若心筋細胞におけるアンジオテンシンIIの強心作用の分子機序の研究
  • L型Ca2+チャネルのクラスタリング機構に関する研究
  • 心不全におけるL型Ca2+チャネルの機能異常に関する研究
  • L型Ca2+チャネル阻害薬を用いたQT延長症候群の治療法の研究

  • 心不全におけるL型Ca2+チャネルの機能異常に関する研究
    近年の薬物療法の発展にも関わらず、心不全の生命予後は悪く、本邦の成人の重要な死亡要因です。したがって、心不全の病態生理をより詳細に研究し、さらに新しい治療法を開発することが急務です。心不全では、過剰な交感神経活動による心室筋細胞のβアドレナリン受容体刺激が、病態形成に重要な役割を果たしています。我々は、下図のようにβアドレナリン受容体アゴニストであるイソプロテレノールを慢性投与した心不全モデルマウス(ISOマウス)の心室筋細胞で、興奮収縮連関の要であるT管のL 型Ca2+チャネル(LTCC)の活性が約半分に低下し、表面細胞膜のLTCC活性が上昇していることを初めて見出しました(Horiuchi-Hirose, M. et al. (2011) Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 300: H978-H988)。T管のLTCC活性の低下は、心不全における心収縮力の低下に寄与していると思われます。 さらに我々は、β2アドレナリン受容体とM2ムスカリン性受容体によって活性化されたGi/o蛋白質が、蛋白脱リン酸化酵素(PP)2Aを活性化してT管のLTCCの過剰な脱リン酸化を生じてその活性を低下させ、PP1を抑制して表面細胞膜のLTCCの脱リン酸化を阻害してその活性を上昇させていることも見出しました(Kashihara, T. et al. (2012) Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 302: H1645-H1654; Kashihara, T. et al. (2014) Eur. J. Pharmacol. (in press))。 今後、β2アドレナリン受容体またはM2ムスカリン性受容体に対する阻害薬を用いた心不全の治療法を考案してゆきたいと考えています。