信州大学医学部・分子薬理学講座

Department of Molecular Pharmacology
Shinshu University School of Medicine

トップ まえがき 研究テーマ 論文 スタッフ 学生募集 アクセス

  • 血小板由来増殖因子による合成型血管平滑筋細胞の遊走誘導の分子機構の解析
  • 骨格筋の収縮におけるL型カルシウムチャネルとジャンクトフィリンの役割
  • 幼若心筋細胞におけるアンジオテンシンIIの強心作用の分子機序の研究
  • L型Ca2+チャネルのクラスタリング機構に関する研究
  • 心不全におけるL型Ca2+チャネルの機能異常に関する研究
  • L型Ca2+チャネル阻害薬を用いたQT延長症候群の治療法の研究

  • 心筋細胞のT管の構成と機能に関する研究<

     哺乳類の心室筋細胞には,T管という特殊な膜構造があります。これは心筋細胞の形質膜が,細胞の長軸に対して直角に細胞内へ陥入したチューブ状の構造です。T管の細胞膜には,L型Ca2+チャネルが集積しており,形質膜に生じた活動電位はT管を通じてL型Ca2+チャネルを活性化し,細胞の深部でCa2+流入を引き起こします。このようにして流入したCa2+は,細胞全体の筋小胞体からの一様なCa2+遊離を引き起こして,効率的な興奮収縮連関を可能にします。T管は,生後に急速に発達して心室筋細胞の力強い収縮を可能にします。また心不全では,その構造が乱れ心室筋細胞の収縮力の低下が起きると言われています。このようにT管は,哺乳類の心室筋細胞の機能にとって重要なものですが,それが構成される分子機構は全く分かっていません。我々は,細胞膜に結合し細胞膜の湾曲を作り出すBARドメインを有する蛋白質に注目し,T管が構成される機構,そこにL型Ca2+チャネルが集積する機構を明らかにしようとしています。


    GFP融合BARドメインタンパク質を新生児ラット心筋細胞に強制発現させた結果。GFPで標識された管状構造物が確認できる(左)。コントロールのGFPのみではこのような構造はできない(右)。


    ラット成熟心筋細胞のT管をdi-8-ANEPPSで染色したもの。細胞内の管状構造が赤い蛍光で確認できる。