信州大学 伊東研究室 HPへようこそ

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 薄いフィルムなどに用いられている高分子や直径1~10 nmで長さ数μmの細長い炭素繊維であるカーボンナノチューブ(CNT)を薄く製膜すると、 細い針に巻きつけたり、くしゃくしゃに丸めても壊れない、超柔軟な薄膜が得られます。
これらと金属を複合化して透明で伸び縮みするゴムのような薄いフィルムの上に搭載すれば低抵抗で伸び縮み可能な電極となりますし、人の皮膚や紙などミクロレベルでは凸凹したモノの上に貼り付けて激しく動かしても動作可能な次世代のセンサや発光デバイス、発電素子、電子回路などの様々な光・電子デバイスを実現可能です。
搭載するデバイスそのものも有機材料など柔軟な物質を使うことで、材料の柔らかくて衝撃・伸び縮みに強い特性を活かした、超軽量な環境にもお財布にも優しくて高性能な発電デバイスや光源や表示素子、メモリ機能を搭載した電子デバイスの実現に貢献できます。また、薄くて柔軟でいろんなところに貼り付け可能な高性能センサなどは医療やヘルスケア用途での活躍が期待できます。

 ただし、人の皮膚に貼り付けて使うような応用を目指す場合、直接身体に接触する部分は人体に馴染む材料(生体親和性)を使いたいですし、時にはガーゼのようにナノ~ミクロの穴を構築して通気性を持たせることもポイントかもしれません。
また、PETフィルムや紙や布といったものに作製することで普及が加速しますが、これらは150℃を超えるような温度には耐えられないため、Siはじめ多くの無機半導体の製造に必要な500℃を超えるような高温プロセス(しかも数時間を要する)ではなく、
150℃未満の低温プロセスや各層(電極や半導体等)の製膜時間を1/10以下にするような画期的な技術の開発(革命)が重要です。
 また、例えば屋内の光の明るさは日光の1/100以下ですので身の回りの照明や日陰の光やそよ風のような小さなエネルギーを電気エネルギーとして回収して(エネルギーの観点で)おつりをもらいたければ製造に必要なエネルギーを1/100にしたいのです。また、使い終わって廃棄する際のごみ問題を解決して環境に優しいモノづくりを実現するには超薄で軽量で廃棄量を1/100にしたい。
 このような欲求を満足するには、厚さ10~100nmに薄く低温でしかも数分程度の短時間で塗って作れる有機材料やインクにできるナノ材料(CNTや量子ドット、ZnやTiを使ったナノ酸化物材料) とこれらを用いて従来の素子に負けない性能を有するデバイスの実現が鍵となります。


 伊東研究室では、有機半導体やナノシート、量子ドットなど厚さや大きさがナノメートル(10億分の1メートル)サイズの新材料や柔軟な高分子などを組合わせて以下の開発を目指しています。

(i)光を電気に変換する太陽電池や柔らかな物質の動きを電気エネルギーに変換するマイクロ(環境)発電デバイス(エネルギーハーベスティング)

(ii) 塗って作れる有機ELや有機ELと量子ドットの利点を組み合わせた新しい高性能な発光ダイオード

(iii) 有機半導体や誘電体を組み合わせた、超薄膜コンデンサや、様々なフィルムに対応次世代のメモリーデバイス

(iv) CNTやグラフェンなどのナノカーボンと有機(高分子)材料を組み合わせた、世界一高速な湿度センサーやガスセンサ、柔軟性を活かした伸び縮み(動き)センサ等の開発と応用(例えば、ヘルスケア関連)


大人の事情で全てというわけにはいきませんがが、詳細は、MENUから「研究(Research)」をご覧ください。

工夫次第で桁違いの時短と簡便さで製膜できる塗布 (=ウェットプロセス)技術と適材適所に真空プロセスをうまく組合わせて驚異的な性能と新機能を発現する次世代デバイスの実現を目指して、新機能の発現や高性能化のしくみを調べながら自身も含めメンバー全員の成長を目指しています。

研究概要の図


電子材料・デバイス(部品)は一見目立たないけど、コンデンサやそこから発展した産業は日本・世界の電気電子産業の要です。電気電子工学分野は非常に広く多様な業界への進路が考えられますが、自分で作った物が工夫とアイデアで何倍にも性能が向上する過程や達成感を通して、自力を付ければ飛躍が期待できます。また、上記のように、低温・塗布プロセスで実現する、高性能デバイスは2020~2030年代に性能、応用面で大きく広がり全く新しい産業を創出する可能性があります。例えば、フィルムタイプの太陽電池やセンサといったものは有機系材料が使われますが、これらの市場は2030年代までに100倍以上に急成長することが期待されています。チャレンジ精神次第で、技術開発者として、大きく成長してくれることを期待しています。
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