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写真:産業論特論

平成21年度 第3回 松田 隆利先生(国家公務員制度改革推進本部事務局次長・元総務事務次官)の講義が行われました。

平成21年5月13日 第3回 松田 隆利先生の講義が行われました。

テーマ:「国の行政改革の戦略論」

 

 第3回講義においては、国家公務員制度改革推進本部事務局次長の松田隆利氏より、「国の行政改革の戦略論」と題して、近年の行政改革の大きな流れとそのなかでのリーダーシップをご講義いただいた。最初に「かっこいい話」には苦労が多いとされたうえで、総論賛成・各論反対の典型例が行政改革であるとして、1981年からはじまった土光臨調について紹介された。土光臨調では、変化への対応、総合性の確保、簡素化・効率化、信頼性の確保が謳われたが、これは現代行政の問題点の裏返しであり、身の丈に応じた支出をめざす増税なき財政再建、国鉄や電電公社の公社民営化が進められた。土光敏夫氏は行政改革は国民運動であるべきとして全国行脚を積極的に行い、明治人の気骨を持たれた民間の国民的リーダーのお人柄の一端を、また、「要すれば3点」が口癖だった瀬島龍三氏のお人柄も紹介された。1990年にできた鈴木第三次行革審では、大正文化人の雰囲気を漂わす鈴木永二日経連会長のもと、規制改革や行政手続法の制定が提言された。このころまでの行政改革は戦後復興を担った財界の権威に頼っっていたが、その後の細川非自民政権以降の行政改革では政治主導型に移行した。細川非自民政権のもとでは公共事業の一般競争入札拡充、地方機関委任事務の廃止、情報公開法の制定などが進められた。行政改革の理念も徐々に変化し、政治の主導性と行政の中立化が強調されるようになった。1998年の橋本政権下での中央省庁改革では内閣機能の強化、副大臣・政務官体制、独立行政法人制度の創設、政策評価制度の創設がいわれ、いわば「器にかかわる話」が熱心に進められた。このようななかで、財政状況は悪化の一途をたどり、小泉構造改革が行われ、国債30兆、郵政民営化、特殊法人の整理、市町村合併・三位一体の改革が進められた。そして、現在では3つの100年物の改革が検討されているとして、民による公益活動を促進する公益法人改革、戦前からの流れを有する公務員制度改革、そして、各県等が自らの問題として取り組むしかないとしつつ、政令市等の増加による県等の空洞化と戦後に拡充された国の出先機関の再編を視野に入れた地方分権・道州制の議論を紹介された。最後に、改革は100%実現されることはないとしつつ、1985年のプラザ合意後の対応を反省し、今後の政策改革をいかにやっていくかが問われているとして、国民参加・マニフェストに言及され、ご講義を締めくくられた。