水浄化微生物による水環境修復技術の開発

水の循環利用や水由来水素エネルギーの生成・利用等、水を中心とする地球環境再生に関わる「アクア・リジェネレーション(ARG)分野」の研究力強化に取り組んでいます

信州・安曇野市豊科地域は、豊かな自然と澄んだ水に恵まれた環境にあり、地下水は地域住民の生活や農業・産業活動にとって不可欠な基盤資源です。とりわけ、飲料水や農業用水としての地下水の役割は極めて重要であり、その質と量を安定的に保つことは、地域の持続可能な発展に直結しています。近年、気候変動や土地利用の変化に伴い、地下水環境にさまざまな影響が懸念される中で、自然の浄化力を活用した低環境負荷の水質保全技術が求められています。本研究では、安曇野・豊科地域の土壌および水系から環境由来の微生物を採取し、地下水の浄化に資する有用な微生物群の分離と評価を行います。特に、水中の汚染物質を吸着・分解する能力を持つ微生物群に着目し、「Aqua-Microbes」と名付けた微生物群の選抜を通じて、地域特有の自然環境に適応したバイオレメディエーション技術(※)の確立を目指します。
本研究は、このアプローチを地域密着型で展開し、在来微生物を活かした“自然と共生する水環境保全”のモデル構築に貢献するものです。将来的には、これらの微生物を活用した分散型の水浄化装置や、自然エネルギーと組み合わせた自然共生型システムの設計・実装を視野に入れています。さらに、地域の自治体・企業・研究機関との連携を通じて、実用化・事業化を見据えた社会実装を推進し、地域資源の保全と循環型社会の実現に寄与することを目指します。

※バイオレメディエーション(Bioremediation)とは、自然界に存在する微生物(細菌、菌類、藻類など)や植物の浄化能力を利用して、土壌や水中に存在する有害物質を分解・無害化する環境修復技術です。