乳酸菌オリゴDNA(ODN)研究

我々の研究グループは食品の有する三次機能、生体調節機能に注目し研究を進めています。これまでに乳酸菌やビフィズス菌をはじめとする有用微生物由来のイムノジェニクス(免疫調節因子)として、ゲノムDNAおよびDNAモチーフの免疫賦活化作用について追究してきました。また、CpG配列を含まない免疫刺激性配列、ATモチーフを用いて免疫刺激活性と構造相関の詳細を検討し、免疫刺激性DNAの有する特徴的なステムループ構造を発見しました(Shimosato et al., Cellular Microbiology 2006)。近年では、CpG ODN-TLR9シグナリングを阻害するinhibitory ODN(iODN)の研究を進めており、5’-TTAGGG-3’ループ構造と3’末端に3〜5塩基の3’-oligo(dG)3-5 tail構造を有するTh1&Th2免疫応答を強く抑制するiSG3を発見しました(Ito et al., FEBS Open Bio 2013)。現在、オリゴ核酸を用いたワクチンの開発は、感染症、ガン、アレルギー、炎症性疾患の予防および治療などの分野で、幅広い応用が期待されています。しかしながら、オリゴDNAは経口的に摂取すると、胃酸や消化酵素の影響により分解されてしまうという弱点があり、これまで経口投与による試験はほとんど行われていませんでした。我々のグループは、オリゴDNAを100 nm程度のカルシウム性ナノ粒子に包摂する手法を確立し、胃酸耐性DNAナノカプセルを開発しました(Wang et al., Molecular Therapy 2015)。また、DNAナノカプセルが腸管免疫組織に到達し、免疫機能を発揮することを証明しました。さらに、強力な免疫抑制機能を有するオリゴDNAナノカプセルを用いてアトピー性皮膚炎モデルマウスへ経口投与試験を実施し、皮膚におけるアレルギー性炎症反応が抑制されることを発見しました。今後、経口摂取により機能性を発揮するDNA素材の研究開発が飛躍的に展開してゆくことが期待されます。