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平成26年度 文化庁 大学を活用した文化芸術推進事業・信州大学「共時と創発」

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基礎講座[結果報告]

第4回・基礎講座(第2部:国際事業の文化芸術マネジメント)

スキル
経営・企画
講座内容
アートと社会の関係 ~地域コミュニティと国際プロジェクト~(レクチャー)[終了]
講師
小野晋司氏(青山劇場・青山円形劇場 プロデューサー)、鳥山香織助教(産学官・社会連携推進機構)
開催会場
茅野市民館・アトリエ
開催日時
2014年7月16日(水)18:30~20:30

「共時と創発」基礎講座第4回目は、こどもの城・青山劇場・青山円形劇場の小野氏を迎えて舞台芸術における国際プロジェクトの現状や異なる文化圏での文化芸術活動を紹介していただき、鳥山氏からは、まちづくり活動など地域コミュニティに関わる立場からお話いただき、アートと社会のつながりについて考えるレクチャーと対談を行いました。レクチャー後、「アート楽しみ隊」(主催:茅野市民館指定管理者 株式会社地域文化創造、茅野市美術館)によるアートイベントの準備会を行いました。
 

レクチャー内容「アートと社会の関係 ~地域コミュニティと国際プロジェクト~」

まずは、鳥山氏に既存施設をリノベーションして資料館とした事例をもとに地域コミュニティの関わりを紹介していただきました。
「文化活動の場は、文化施設の他にも活用していない商業・住宅、既存施設の用途転用、公共の場など、実は色々あります。建築の役割は、新しい機能や用途、新しい価値をつくる手助けをすることです。リノベーションの例は、アートと社会をつなげる立場として、専門家や地域住民と新しいコミュニティをつくり、一人ひとりのコミットメントを強めることで、文化施設を繰り返し利用してもらえるようにしています」

続いて、小野氏に青山円形劇場で行われた国際的な文化芸術プロジェクトや、クロアチアのパーフォレーションを紹介していただきました。
「ダンス、音楽、映像は国を越えて共有できる。青山円形劇場は国、言語、人種、世代、男女を越えた出会いの場になっており、社会の中でタブーとされていたこと、障害を見つめ直す場であり、それは人間の本質に触れる瞬間、人生の価値を変える瞬間です。劇場では時間と空間を共有しており、観客も芝居に参加しています」
「最近では、コンテンポラリーダンスなどアートの創造性はまちに拡散しており、土地固有のものに挑戦していくアーティストもいます。アーティストは問いかけを発しますが、まちと劇場が成熟するのに長い時間がかかります」
アーティストと文化芸術プロジェクトが地域に広がり、日常と違った視点や人生観における気づきを与えてくれることを教えていただきました。

対談:小野氏×鳥山氏 ※一部抜粋
鳥山 プロデューサーは、アーティストがなげかける問いかけをどう捉えて、どう社会につなげているのですか?
小野 アーティストが投げかける問いを現代の社会とどうつないだら面白いかと考えています。

鳥山 劇場では、時間と空間を共有して客席と一緒に舞台を創り上げていくということですが、その瞬間のリアリティなど目だけで捉えられない何かを創り上げているということでしょうか?
小野 歴史的にも脈々と受け継がれているが、その場にいないと味わえないものがあります。劇場では、お客が投げかけることをアーティストが受け取って次の作品につなげることはよくあります。一方で、劇場の中で仕事していると限られた空間にいる人にしかリーチが届かない、表現できないという不便さがありますが、その点、建築では地域の人や沢山の人に届くものがあるのではないかと思います。
鳥山 建築家は建物を作るだけではなく、その建物をどういった人が使うかを考えますが、最近では、建物を使う人と一緒に建物を作っていくという方向になってきています。そして、建物があるまち、まちの人、気候、風土なども関係させていくことで、人とまちをつなげていくことになります。

鳥山 青山円形劇場は中央に舞台があり、周りには隠すものが何もないですが、アーティストが表現するときにどういったことが起こるのでしょうか?
小野 お客さん目線で考えています。お客さんが笑う表情がみえることで、対面の人もつられて笑います。見る角度で違った印象をうけるということが起こります。アーティストや役者さんは、通常はプロセニアム形式で後ろにお客さんがいることはないので、初めは慣れないと思います。しかし、一旦それに慣れると、360度反応が返ってくるので、役者冥利につきるということになるのでしょうか。作品自体がお客さんと作っていることが感じる、よくわかると思います。
鳥山 お客さんが芝居に参加してひとつの作品が出来上がっていくことが、よりアーティストも感じられるということですね。

鳥山 最近は、ワークインプログレスなど、表現している途中や試作段階を見せる動きがありますが、作っている過程や即興性といったことも作品にしようということになるのでしょうか?
小野:創作過程をみせちゃうということです。創作期間の中で作品を見せてフィードバックをもらうということで、中には、ワークインプログレスをした後に作品をがらっと返ることもあります。創作期間の2、3年の間に何回か作品をみせることがあります。
小野 パフォーミングアーツも建築も創っている過程を大事にしている、楽しんでいる、作っている過程を色々な人と大事にしながら進行していく動きがあります。建築や美術の世界で、特に建築では、その土地に長く住み、リサーチしていることも沢山あると思いますが、パフォーミングアーツの人たちもそういう動きがあります。作品にならないかもしれないけれども、創作過程だけでも色々な人たちと関わり色んなつながりを作りながら進行している社会の動きになっています。
小野 モダニズム以降、進化していくなかで、文化祭礼、お祭りが切り離されていったと思います。アジアでも豊かな世界観が忘れ去られていったなかで、北村先生がインドネシアに挑戦していった勇気に感銘を受けました。土地固有のものに挑戦していく振付家はそんなにはいません。お互い日常とは違うフレームで自分をみており、その中でもう一回、自分のなかにある遺伝子をみつめて、遺伝子でつながるということが起こり、何かを呼び起こす、記憶の中を掘り起こすことができるのでしょう。自分たちの伝統を考えながらワークインプログレスを見てみてほしいです。

小野氏と鳥山氏の対談を受けて地域でアートイベントを実施している、アート楽しみ隊のアートイベント「準備会」を実施しました。関氏がファシリテータとなり、講師と受講生を交えて、茅野市民館でどんなことができるかアイディアを出し合いました。
「縄文の時の音やダンスを創作してみる」
「ダンスパフォーマンスをしてみたい」
「茅野市民館の床や天井の高さを活かした何かをしてみたい」
などアイディアが出ました。
受講生からは、「アーティストが社会に問いたいことと社会とがきっと相互に関係すると信じ、やってみることが大切だと思った」などの感想や、「建物と劇場の意味が自分なりに考えを持てるために、もう少し話が聞きたかった」などの意見をいただきました。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

レクチャーの様子レクチャーの様子レクチャーの様子

レクチャーの様子