ポートレートモード(縦置き)表示でご覧ください。

2024.05.08
研究課題名
きのこ栽培による木材端材の利用価値創出と地域内資源循環モデル創成に関する研究

参加研究者

信州大学農学部:山田 明義
株式会社やまとわ:奥田 悠史
信州大学人文社会科学研究科 玉田 梨々花
信州大学URA室:三宅 誠司、宮原大地

研究のポイント・成果等

〇 これまでは大部分が廃棄されていた木材の製材端材などを原料に培地・原木として循環利用し、育成林内できのこを栽培・販売する事業モデルが、林業における新たな収益源として有望であることが確認されました。

研究内容
 木材は、製材時に大部分が廃棄されており、その歩留まりは2割程度と言われています。私たちは、その製材端材や木屑などをバイオマスと捉え、これをきのこ用培地として循環利用することによって、育成林内でのきのこ栽培が可能ではないかと着想しました。しかしながら、多くの製材端材は針葉樹であり、きのこ栽培には不適とされています。そこで本プロジェクトでは、製材端材のきのこ培地としての活用可能性と、針葉樹でも育つきのこ種の選定、そして栽培されたきのこを販売することによる新たな収益モデル構築を主眼に、フィールド調査や業界関係者へのヒアリングなどを行って、モデル確度を向上させることを目指しました。 その結果、食用に供される腐生性きのこや菌根性きのこの複数種が、針葉樹等の端材を培地として栽培できる可能性が示されました。更に、調査を進める過程で、食用菌根性きのこである「タマゴタケ(学名:A. caesareoides)」のうち、温帯〜亜熱帯に分布(伊那市の里山にも生息)するものが新種のサトタマゴタケ(学名:A. satotamagotake)に区分されることを明らかにしました(図1)。これにより、新たな地域資源として、新種きのこのブランディングを図れる可能性もあります。また、これらのきのこの販売時得た利益で林地の管理コストを賄ったとしても、十分に収益化できる可能性も示され、本モデルの確度が高まりました。 今後は、実際にきのこを栽培して収益モデルが成り立つか検証するとともに、製材端材にきのこ培地以外の用途(肥料や高強度材料等)がないか引き続き検討を進め、地域資源が完全に循環する農林業の構築に貢献していきます。また、里山に生息するきのこ類を正確に鑑定できる人材を養成し、地域の新たな資源確保やブランディングなどに結び付けていくことを目指します。

連絡先

信州大学URA室 宮原 大地
Mail:miyaharad@shinshu-u.ac.jp