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2024.05.08
研究課題名
無機結晶・植物ハイブリッド型完全循環型陸上養殖システム開発

参加研究者

先鋭材料研究所・卓越教授・手嶋勝弥
バイオメディカル研究所・准教授・伊原正喜

研究のポイント・成果等

〇 完全循環型の陸上養殖を実現する生物・無機ハイブリッド型浄水システムで、休耕田などを活用した中山間地の産業創生つなげる。

研究内容
図1  長野県は、信濃川・天竜川・木曽川などの源流であり、その豊富な水を利用した陸上養殖が実施されています。陸上養殖では飼料を魚の餌として与えますが、その一部は魚に利用されず、排水として河川に放流されています。環境負荷の低減や飼料に含まれる窒素やリンなどの資源の効率活用を可能とする循環閉鎖型の陸上養殖システムの活用は、環境問題解決の一つの解となります。
 本プロジェクトでは、長野県の地域資源を生かした完全循環型陸上養殖システムの実現を目指しています。同システムは水と物質の2つの循環利用で構成されます。水の循環に関しては、発生する排水をできる限りゼロに抑えるとともに、外部からの水供給もできる限りゼロにします。これにより、環境負荷となる排水を大幅に削減できます。さらに、大量の水の補給を必要としないため、水が得られない場所への設置も可能です。物質の循環に関しては、排水とともに放流されていた窒素やリンなども回収できます。
図2  本システムのカギは水浄化システムです。本プロジェクトでは、無機・生物ハイブリッド型の浄水・水循環システムで実現します。魚などの排泄物や飼料の食べ残しから発生するアンモニア、亜硝酸/硝酸、リン酸などを藻類(図1)の栄養分として活用します。加えて、無機吸着材(図2)を併用して過剰な溶存成分(陽イオン・陰イオン)を除去することで養殖システム内の物質の流れを安定化させ、養殖に最適な水質を維持します。成長した藻類は魚の餌として、吸着材にとらえられた成分は脱着して再度物質循環に戻し、物質を最大限活用します。
図3  本プロジェクトにて、開発する浄水システム(図3)では、浄水材料と植物をハイブリッド化します。その結果、植物だけでは不安定になりやすい水質管理を容易にします。令和5年度は、循環型陸上養殖システムのパイロットモデルを運転し、水質などの変化を観測しました。魚としてモロコを、植物として野沢菜を栽培しました。さらに水辺の生態系を模したビオトープ型の陸上養殖システムのプロトタイプも作製し、実際に魚を飼育してその生産効率を確認しました。

連絡先

学術研究・産学官連携推進機構 信大クリスタルラボ副所長 土井達也
Mail : shindaicrystal@shinshu-u.ac.jp