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2024.05.08
研究課題名
地域資源である水を活かした高付加価値な発酵食品製造方法の開発

参加研究者

先鋭材料研究所・卓越教授・手嶋勝弥
バイオメディカル研究所・教授・下里剛士

研究のポイント・成果等

〇 信大クリスタルを用いた浄水装置で、食品製造用水の水質を醸造用に適するように改善した。その土地の水を活かした信州ブランドの形成に向け、地域の味噌蔵の協力を得て、みそ製造設備を用いた試験醸造試験を実施した。

研究内容
図1  長野県は日本一の味噌の生産額(700億円、国内シェア52%)や日本2位の酒蔵数(74蔵)を誇り、発酵食品製造が盛んな地域です。発酵食品は、水、気候、酵母などのその土地がもつ環境により、その品質が変化します。それが各蔵の差別化にもつながっています。
 水は発酵食品の製造に必要不可欠であるとともに、土地によって水質が大きく異なります。特に、日本酒造りや味噌づくりでは、使用する水の水質が厳密に定められているため、醸造に適した水質に調整する技術が必要とされます。具体的には、水に含まれるFeイオン、MnイオンあるいはCuイオンが製品の着色などの原因となるため、これらの重金属イオンをppbレベル以下の濃度に除去することが必要です。また、Caイオン、MgイオンあるいはKイオンなどのミネラルは醸造の要である酵母の活動に必要です。このように重金属類を含まず、適度にミネラルが含まれている水が醸造に適した水です。
図2  信州大学のフラックス法で開発したイオン交換結晶は、重金属イオン類を選択的にイオン交換(吸着除去)できます。図1の緑棒で示すように、重金属イオンはppbレべルまで除去できるのに対し、水質を特徴づけるミネラル(CaやMgなど)はほとんど除去しません。この機能を活用することで、発酵食品の製造に不要なFe、MnあるいはCuを除去しつつ、ミネラル成分のCaやMgなどを残します。その結果、それぞれの土地によって異なる水質を活かした発酵食品を製造できます。
 今回、信州各地の老舗味噌蔵・醤油蔵の協力を得て、信大クリスタルを搭載した浄水装置を設置し、味噌・醤油の製造用水の浄水有無による影響を調べています。浄水装置には、信大クリスタルと活性炭を複合化した浄水カートリッジ(図2)を搭載しています。
図3  試験用の味噌・醤油は、水以外の醸造条件をすべて同一として、一定期間毎にサンプルを取得しています。水の違いによる発酵の進み方の違いを観測しました。令和5年度の検討では、信大クリスタル浄水を用いることで、より品質が高い味噌を製造できることを明らかにしました。
 信州の水の特長を生かした発酵食品づくりが、高い価値と品質、ならびに独自性をもった信州ブランドに成長することを目指します。

連絡先

学術研究・産学官連携推進機構 信大クリスタルラボ副所長 土井達也
Mail : shindaicrystal@shinshu-u.ac.jp