Agri-transformation（農X）を実現する
信州農X実践フィールド

　長野県は、信濃川・天竜川・木曽川などの源流であり、その豊富な水を利用した陸上養殖が実施されています。陸上養殖では飼料を魚の餌として与えますが、その一部は魚に利用されず、排水として河川に放流されています。環境負荷の低減や飼料に含まれる窒素やリンといった資源の効率的な活用を可能とする循環閉鎖型の陸上養殖システムの活用は、一つの解となっています。
　本プロジェクトでは、長野県の地域資源を生かした完全循環型陸上養殖システムの実現を目指しています。同システムは水と物質の2つの循環利用で構成されます。水の循環に関しては、発生する排水をできる限りゼロに抑えるとともに、外部から水供給もできる限りゼロにします。これにより環境負荷となる排水を大幅に削減することが可能となります。さらに大量の水の補給を必要としないため、水が得られない場所への設置も可能となります。物質の循環に関しては、排水とともに放流されていた窒素やリンを回収します。
　本システムのカギとなるのは、水浄化システムです。本プロジェクトでは無機・生物ハイブリッド型の浄水・水循環システムで実現します。魚などの排泄物や飼料の食べ残しから発生するアンモニア・亜硝酸・硝酸・リン酸等を藻類(図1)の栄養分として活用するとともに、無機吸着材（図2）を併用して過剰な溶存成分（カチオン・アニオン）を除去することで養殖システム内の物質の流れを安定化させ、養殖に最適な水質を維持します。成長した藻類は魚の餌として、吸着材にとらえられた成分は脱着して再度物質循環に戻し、物質を最大限活用できるようになります。
　本プロジェクトにて、開発する浄水システム(図3)は、浄水材料と植物をハイブリッド化することで、植物だけでは不安定になりやすい水質管理を容易にします。さらに水質の監視システムなども含めて提案することで、誰でも取り扱いが可能な完全循環型の陸上養殖のための水質管理システムとします。これにより、中山間地などでの高付加価値な産業創生を目指しています。