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2023.08.03
研究課題名
全てを天然素材で作り上げる安心・安全な建築資材の実証研究

参加研究者

代表研究者 : 農学部 喜井 勲
分担者 : 農学部 末定 拓時
    農学部 細尾 佳宏

研究のポイント・成果等

◯ ホルムアルデヒドに代わる天然素材由来のアルデヒド物質と微生物発酵から得られる天然素材を混合して得られる接着剤を開発し、木片や木屑から木質ボードの製造を目指します。

◯ 研究の結果、4種類の多糖からアルデヒド物質を合成し、樹脂として利用できることが確認できました。さらに、そのうちの 1 種を使用してアカマツの薄板を貼り合わせた合板を作成できました。

研究内容
図1  廃材や間伐材などの木材廃棄物を小片化・繊維化し、接着剤を用いて集積して製造される木質ボードは、廃棄物を焼却しないことから資源循環と二酸化炭素の削減の点で地球環境の悪化抑制に貢献しています。以前は、シックハウス症候群の一因として木質ボードの作製に使われる接着剤の主成分であるホルムアルデヒドの放散が問題視されていましたが、近年ではホルムアルデヒド使用量の削減や、ホルムアルデヒドのキャッチャー剤の開発が進んだことで、室内の安全性が担保されるようになりました。一見すると問題がないように見えます。しかし、ホルムアルデヒドは化石燃料資源である天然ガス(メタン)から製造されるため、新興国の発展や木材需要喚起などによってホルムアルデヒドやホルムアルデヒド溶液であるホルマリンの需要が今後ますます拡大すると予想されており、化石燃料資源の枯渇問題を回避するための方策を準備しなければなりません。そこで我々のグループでは、天然資源由来でホルムアルデヒドの代替物となる物質の開発に取り組みました。その結果、4種類の多糖からアルデヒド物質を合成し、樹脂として利用できることを確認しました。さらに、その中の1種類を用いてアカマツの薄板を貼り合わせ、合板を作製しました。
 今後は、国内規格に準じた合板の品質評価やアルデヒド化多糖の量産化に資する新規触媒探索を行います。これらに加え、生体組織の固定液、防虫・防腐剤、殺菌剤、ウイルス除去剤など他の用途への展開も検討します。

連絡先

信州大学学術研究・産学官連携推進機構 助教(URA)三宅 誠司
Mail : miyake_seiji@shinshu-u.ac.jp