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2024.05.08
研究課題名
ミリ波レーダ技術を用いた家畜の非接触管理システムの構築

参加研究者

代表研究者 : 理学部 松本 卓也
分担研究者 : 農学部 農学部 竹田 謙一
      農学部 今井 裕理子

研究のポイント・成果等

〇 農用動物の効率的な発情・健康状態管理を行うために、波長が短く分解能の高いミリ波レーダを用いて、非接触かつ非侵襲的に呼吸数・心拍数を計測する技術を開発します。更に、家畜だけでなく動物園動物や野生動物への応用を視野に入れて、かつ当初よりヒトの医学・介護用に発展してきた当レーダ技術を四足畜産動物へと応用するためのその動物間を繋ぐ種として、霊長類を対象とした技術開発に着手しました。

研究内容
図1 季節変化による環境温度の違いがヒツジの呼吸数に及ぼす影響:ミリ波レーダーの社会実装を目指すべく、その基礎的知見を得るために、ヒツジを対象として暑熱環境時の直腸温、呼吸数、環境温度の変化を比較しました。その結果、環境温度(図1青線)と温熱指標であるHeat Load Index(図1赤線)の変化が認められた屋外実験環境下において、供試ヒツジの直腸温は最大値と最小値の差はわずか0.4℃しか認められませんでした(図2緑線)。しかし、同環境下における供試ヒツジの呼吸数は、最大値と最小値との差が62回/分も認められました(図3橙線)。以上より、ミリ波レーダーの畜産現場の応用により、家畜の暑熱ストレスを的確に把握できる可能性が示されました。 図2
飼育下チンパンジーを対象としたミリ波レーダ計測の初成功:本研究プロジェクトにおいて、ミリ波レーダを用いてチンパンジーの瞬時心拍間隔を、接触せずに測定することに成功しました。 図3 ミリ波レーダ技術を用いた瞬時心拍間隔を非接触かつ高精度に測定する研究は、ヒト以外に愛玩動物や家畜を対象とした報告が多くありますが、チンパンジーなどの類人猿を対象にした報告はありませんでした。 この研究では、ミリ波レーダを用いてヒトおよびチンパンジーを非接触で測定し、新たに開発した手法により瞬時心拍間隔を推定したところ、標準的に用いられる心電計による測定値と高い精度で一致し、チンパンジーの瞬時心拍間隔を非接触かつ高精度で計測できることがわかりました。

右図 [岩田等, IEEE Sensors Letters, 2023]

この技術開発は今後、野生動物や飼育動物の健康・心理状態を、センサ等を直接接触しないで把握できる重要なツールとしての活躍が期待できます。

連絡先

信州大学理学部・助教 松本卓也(matsumoto_t@shinshu-u.ac.jp)
信州大学農学部・准教授 竹田謙一(ktakeda@shinshu-u.ac.jp)