ナノナノ複合体で日本型農業の未来を拓く

野口 徹

信州大学 先鋭領域融合研究群 先鋭材料研究所 特任教授
ナノアグリ・フォーカス・コンソーシアム研究代表者

日本は資源に乏しい国と言われますが、乏しいのではなく、有効に活用されていない資源が存在するのです。そのひとつが野菜の茎や葉、間伐材などの未利用・低利用農林水産物資源です。これらはすでに日本国内に豊富に存在し、将来的にも枯渇する心配のない資源ですが、その有効的な活用法が未だ課題となっています。
我々は、廃棄プラスチックの一部を焼却する際に発電し、その電力を施設園芸に供給し、高品質の作物を一年中安定的に生産する試みを行っています。
さらに本プロジェクトでは、廃棄プラスチックに未利用・低利用農林水産物資源から作製したセルロースナノファイバー(CNF)及びナノカーボンを混合したナノナノ複合材料を製造し、その複合材を利用した高性能の農業用資材の開発を進めます。
これら資材の製品化及び普及により、次世代施設園芸における廃棄プラスチックの高効率リサイクル体制の構築とCNFの農業分野での実用化を実現し、農業の大規模化と生産性アップ、農業を継承する若者への魅力向上、ひいては循環型持続可能社会の形成など、様々な相乗効果がもたらされ、日本型農業の未来を拓くと期待しております。

森林から始まる新たなマテリアルストリーム

磯貝 明

東京大学大学院 農学生命科学研究科
教授

日本は国土の66%が森林で、豊富な木質バイオマスを有していますが、現状では有効に利用されているとは言えません。木質バイオマス中には幅約3ナノメートルと超極細均一幅のバイオ系ナノ材料である「セルロースナノファイバー」が大量に蓄積されています。このセルロースナノファイバーを汎用および先端部材に利用することで、森林から工業材料としての新たなマテリアルストリームが構築できると期待しています。未利用森林資源の有効利用は林業の活性化だけではなく、異分野異業種融合型の新産業創成や雇用促進にもつながり、さらには大気中の二酸化炭素の削減、地球温暖化防止などの効果も期待できます。当ナノアグリ・フォーカス・コンソーシアムをプラットフォームとする産官学連携プロジェクトを通じて、木質バイオマスを資源とする材料・エネルギー利用を進めることで、循環型社会基盤の構築や再生産可能な木質バイオマスの利用の促進という世界的な目標に対して、日本が世界をリードすることが可能です。

循環型社会の実現と農林水産業の発展を目指して

松浦 英樹

株式会社富山環境整備 代表取締役

私たちは1973年に創業し、廃棄物収集運搬処理事業、再資源化と廃棄物からのものづくりを行う総合リサイクル企業として、循環型社会の実現に向けて様々な取り組みにチャレンジしてきました。また2015年からは、廃棄物を焼却処理する際に発生する廃熱や電力を活用した環境配慮型農業を実践しています。
産業を支える重大な社会的使命を担う総合リサイクル企業として、また地域の活性化につながる農業と安心で安全な農作物の生産を目指す農業従事者として、農業残渣の有効活用と再生プラスチックの可能性を新たに広げる研究開発に携われることは大変意義深く光栄な機会であると考えています。
産官学連携をとりながら、廃棄物処理分野と農業分野の異分野融合によるイノベーションを創出することによって、より一層、地球環境とわが国の農林水産の発展に寄与できるよう、尽力いたします。