ARG機構平出翔太郎助教(特定雇用)、田中秀樹教授らによる研究論文が、英国王立化学会(Royal Society of Chemistry)発行の国際学術誌Chemical Communicationsに掲載され、同誌のOutside Front Cover Artを飾るとともに、Hot Articlesに選出されました。

Hot Articlesは、編集部により「注目度が高く、学術的意義の大きい研究成果」として選ばれた論文に与えられるものであり、今回の選出は本学の研究力を国内外に発信する上でも大変意義深いものです。

■ 論文タイトル:
Latent asymmetry of gate opening and closing in a flexible MOF probed by time-resolved in situ XRD
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■ 掲載誌:
Chemical Communications (Royal Society of Chemistry)
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柔軟な多孔性材料であるFlexible MOFは、自身の構造を変形させながらガス分子を取り込む「ゲート吸着」と呼ばれる特異な現象を示します。現在産業利用されている多孔性材料とは全く異なるこの性質から、Flexible MOFは次世代の吸着剤として注目を集めています。Flexible MOFは、ガス分子を放出する際も構造変形を伴う「ゲート脱着」現象を示すのですが、一般的に同じ変形経路を逆に辿る対称的なものと想定されてきました。本研究ではこの通説を検証するため、時分割その場X線回折(TRXRD)法と呼ばれる最先端の測定を、日本が誇る大型放射光施設SPring-8で行い、Flexible MOFの一種であるELM-11が二酸化炭素(CO₂)とn-ブタンを吸脱着する際の構造変化を詳細に追跡しました。その結果、従来の見解とは異なり、ゲート吸着とゲート脱着の変形経路が著しく非対称であることが明らかになりました。本研究は、これまで見過ごされてきた「隠れた非対称性」という新しい概念を提示することで、柔軟な多孔性材料全般の学術的理解を深化させ、今後の材料開発に新たな知見をもたらすものです。
本学では、今後も世界水準の研究を推進するとともに、広く社会へ貢献する知の創出をめざしてまいります。

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