○信州大学研究用微生物等安全管理規程
(平成28年7月21日信州大学規程第281号) |
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目次
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 安全管理体制(第3条-第11条)
第3章 研究用微生物等の安全管理に関する基準等(第12条-第18条)
第4章 緊急事態の措置等(第19条-第21条)
第5章 健康管理(第22条-第25条)
第6章 その他(第26条-第28条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この規程は,信州大学(以下「本学」という。)における実験室での研究用微生物等の取扱い及びその安全確保に関し必要な事項を定めるものとする。
2 研究用微生物等の取扱い及びその安全確保については,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症予防法」という。)及び家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)に定めがあるもののほか,この規程の定めるところによる。
(定義)
第2条 この規程において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。
(1) 研究用微生物等 研究に用いる細菌,真菌,ウイルス,原虫を含む寄生虫,プリオン及び微生物をいう。
(2) 病原性 研究用微生物等が,何らかの機序により,人又は動物に危害を及ぼす性質をいう。
(3) BSL 研究用微生物等を使用する実験(以下「実験」という。)における研究用微生物等のバイオセーフティーレベルのことであり,レベル1から4までの分類区分をいう。
(4) ABSL 動物を用いた実験における研究用微生物等のバイオセーフティーレベルのことであり,レベル1から4までの分類区分をいう。
(5) 指定実験室 BSL3又はABSL3(以下「レベル3」という)の実験を実施する室をいう。
(6) 微生物等管理区域 指定実験室及びその他の研究用微生物等の安全管理が必要な特定の区域をいう。
(7) 安全管理主任者 研究用微生物等を用いる実験における安全管理について指導監督に当たる者をいう。
(8) 実験責任者 研究用微生物等を実験に利用し,又は保管若しくは供与する者のうち,それらの行為に責任を負う者をいう。
(9) 実験従事者 研究用微生物等を実験に利用し,又は保管若しくは供与する者をいう。
(10) 特定病原体等 感染症予防法第6条第19項に規定する特定病原体等をいう。
第2章 安全管理体制
(安全管理業務の統括)
第3条 学長は,本学における研究用微生物等の安全管理に関する業務を統括する。
(研究用微生物等安全管理委員会の設置)
第4条 本学に,第1条の目的を達成するため,信州大学研究用微生物等安全管理委員会(以下「委員会」という。)を置く。
[第1条]
(委員会の職務)
第5条 委員会は,次に掲げる事項について調査・審議し,必要な措置を講じるものとする。
(1) この規程の改廃に関すること。
(2) 研究用微生物等の病原性のレベルの分類に関すること。
(3) 実験室の安全設備及び運営に関すること。
(4) 研究用微生物等の利用,保管及び供与に関すること。
(5) 事故及び災害発生時の措置に関すること。
(6) その他研究用微生物等の安全管理に関すること。
(委員会の組織)
第6条 委員会は,次に掲げる委員で組織する。
(1) 研究担当の理事
(2) 教育学部,理学部,医学部,工学部,農学部,繊維学部,医学部附属病院,全学教育センター及び基盤研究支援センターの安全管理主任者
(3) 研究推進部長
(4) その他委員会が必要と認める者
(委員長及び副委員長)
第7条 委員会に,委員長及び副委員長を置く。
2 委員長は前条第1号に規定する委員をもって充て,副委員長は同条第2号に規定する委員のうちから,委員長が指名する委員をもって充てる。
3 委員長は,委員会を招集し,その議長となる。
4 副委員長は,委員長を補佐し,委員長に事故があるときは,その職務を代行する。
(委員会の庶務)
第8条 委員会の庶務は,研究推進部研究支援課において処理する。
(安全管理主任者)
第9条 研究用微生物等を取り扱う施設を置く部局の長は,当該施設における研究用微生物等の安全管理に関する業務を管理するために,安全管理主任者を置かなければならない。
2 安全管理主任者は,研究用微生物等の取扱い上の安全確保について実験責任者及び実験従事者に指導助言を行い,感染予防及びまん延の防止について監督指導しなければならない。
(実験責任者)
第10条 実験責任者は,実験における研究用微生物等の安全管理に関し責任を負う。
2 実験責任者は,研究用微生物等を取り扱う場合,第14条第2項から第7項までに規定する届出及び申請を行わなければならない。
(実験従事者)
第11条 実験従事者は,研究用微生物等を取り扱う場合は,この規程を遵守しなければならない。
第3章 研究用微生物等の安全管理に関する基準等
(研究用微生物等のレベルの分類)
第12条 研究用微生物等のレベルを分類する基準は,別表第1のとおりとする。
[別表第1]
2 委員会は,研究用微生物等の分類が前項の分類基準によることが適切でないと認めた場合は,実験の方法及び実験に用いる研究用微生物等の量により,当該研究用微生物等のレベルを別に定めることができる。
3 植物を用いる研究においては,必要に応じ,植物防疫法(昭和25年法律151号)の定めるところにより行う。
(実験室の安全設備及び運営に関する基準等)
第13条 研究用微生物等を用いる実験室は,研究用微生物等のレベルに応じ,別表第2に定める基準に従って必要な設備を備え,運営されるものとする。
[別表第2]
2 委員会は,別表第2に定める研究用微生物等を用いる実験室の安全設備及び運営の基準のほか,実験室の安全確保に関し必要な事項については,別に定めることができる。
[別表第2]
3 委員会は,必要があると認めるときは,実験室を査察し,必要に応じ指導することができる。
4 実験責任者は,あらかじめ委員会の承認を得た後でなければ実験室で研究用微生物等を用いることはできない。ただし,信州大学遺伝子組換え実験等安全委員会によって既に承認されたP1及びP2実験室については,それぞれレベル1及びレベル2の研究用微生物等を取り扱う事ができるものとする。
(研究用微生物等の取扱いに係る手続)
第14条 本学においては,レベル4に該当する研究用微生物等の取扱いはできないものとする。
2 実験責任者は,レベル2の研究用微生物等を新たに用いて実験し,又は新たに保管しようとするときは,別紙様式第1号により,あらかじめ,委員長に届け出なければならない。
3 実験責任者は,前項の届出に係る研究用微生物等の実験又は保管が終了したときは,別紙様式第2号によりその旨を届け出なければならない。
4 実験責任者は,レベル3の研究用微生物等を,新たに用いて実験し,若しくは新たに保管し,又は学内他部局等及び本学以外の機関へ供与しようとするときは,別紙様式第3号又は別紙様式第4号により委員長に申請し,承認を受けなければならない。
5 実験責任者は,前項の申請に係る事項を変更する必要が生じたときは,新たに委員長に申請し,承認を受けなければならない。
6 委員長は,第4項及び第5項の申請があった場合において,委員会の審査を経て,必要に応じその内容の一部を変更して承認することができる。
7 実験責任者は,第2項から第5項の届出及び申請について,部局長を経て,委員長に提出するものとする。
(レベル3の研究用微生物等を取り扱う実験従事者の要件)
第15条 P3施設において別表第1に定めるレベル3の研究用微生物等を用いる実験従事者は,次の各号に掲げる要件を満たす者でなければならない。
[別表第1]
(1) 研究用微生物等の病原性,起こり得る汚染の範囲及び安全な取扱方法,P3施設の機構及び使用方法並びに事故及び災害の発生時における措置等について,十分な知識を有しかつ技術的修練を経ている者
(2) 第22条に規定する定期の健康診断を受け,異常の認められなかった者
[第22条]
(実験室の表示)
第16条 レベル2以上の研究用微生物等を取り扱う実験室の出入り口には,国際バイオハザード標識を表示しなければならない。
(病原性の研究用微生物等の運搬)
第17条 病原性の研究用微生物等を運搬する場合は,通常郵便に関する施行規則(平成25年条約第15号)の第134条に規定する容器,包装及び外装を用いた方法によらなければならない。
(研究用微生物等の廃棄処理)
第18条 レベル1及びレベル2の研究用微生物等(これらに汚染されたおそれのあるものを含む。)は,当該研究用微生物等に最も有効な消毒滅菌方法に従い,処理されなければならない。
2 レベル3の研究用微生物等(これらに汚染されたおそれのあるものを含む。)は,承認された消毒滅菌方法に従い,処理されなければならない。
第4章 緊急事態の措置等
(盗難等の対応)
第19条 研究用微生物等の盗難又は所在不明を確認した者は,直ちに,実験責任者,安全管理主任者及び部局の長に通報しなければならない。
2 部局の長は,前項の通報を受けたときは,直ちに,学長及び委員会に報告しなければならない。
3 学長は,必要があると認めるときは,警察署等に通報するものとする。
(曝露等の事故時の対応)
第20条 次の各号に掲げる事態が発生したときは,これを曝露事故として扱うものとする。
(1) レベル3の研究用微生物等が実験従事者の体内に入った可能性がある場合
(2) 微生物等管理区域内の安全設備の機能に重大な欠陥が発見された場合
(3) レベル3の研究用微生物等により,微生物等管理区域内が広範に汚染された場合又は感染動物の逸脱など広範な汚染の可能性がある場合
(4) 実験従事者の健康診断の結果,実験に用いたレベル3の研究用微生物等による異常があると診断された場合及びレベル2の研究用微生物等を用いた実験にあっても,実験に用いた研究用微生物等による健康障害であることが曝露事故直後の報告等により明確に特定できる場合
2 前項各号の曝露事故を発見した場合,発見者は,直ちに,実験責任者,安全管理主任者及び部局の長に通報しなければならない。
3 部局の長は,前項の通報を受けたときは,直ちに,学長及び委員会に報告するとともに,必要に応じ委員会と協力して,所要の応急処置を講じなければならない。
4 学長は,前項の報告を受けたときは,安全確保のための所要の処置を講じることを命じるとともに,必要があると認めるときは,危険区域を指定し,当該危険区域の使用を一定の期間禁止するものとする。
(緊急時の対応)
第21条 学長は,地震,火災等の災害による重大な被害が発生し,研究用微生物等の安全管理に関し緊急の対応が必要であると判断した場合は,直ちに委員会と連携して被害等の状況,経過等について調査を行い,必要な処置,改善策等について部局長等に対し指示するものとする。
2 指定実験室において研究用微生物等を取り扱う実験従事者は,地震,火災等の災害による重大な被害が発生したときは,直ちに,必要な措置を講じなければならない。
第5章 健康管理
(健康診断)
第22条 学長は,レベル2以上の研究用微生物等を扱う実験従事者に対して,少なくとも年1回定期の健康診断を実施しなければならない。
(健康診断後の措置)
第23条 学長は,健康診断の結果,実験従事者に研究用微生物等による感染が疑われるときには,直ちに安全確保のために必要な措置を講ずるものとする。
(健康診断の記録)
第24条 学長は,健康診断の結果,健康管理上必要と認められる事項について,実験従事者ごとに記録を作成しなければならない。
2 前項の記録は,実験従事者の離職又は卒業若しくは退学後原則として5年間,保存しなければならない。ただし,取り扱った研究用微生物等の潜伏期間が短いものについてはこの限りではない。
(血清の保存)
第25条 実験責任者は,実験従事者の健康管理の一助とするため,レベル3の研究用微生物等又は特定病原体等を取り扱う場合,実験開始前に実験従事者の血清を採取し,実験完了後2年間保存するものとする。
第6章 その他
(遵守義務)
第26条 実験従事者その他職員等は,研究用微生物等の取扱いについて,安全管理の重要性を理解し,この規程を遵守するとともに,感染症予防法,家畜伝染病予防法,輸出貿易管理令,遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物多様性の確保に関する法律,動物の愛護及び管理に関する法律等の関連法規に定められた規定を遵守しなければならない。
(罰則)
第27条 学長は,この規程に違反した実験従事者その他職員等に対し,微生物等管理区域への立ち入り及び実験室の使用等について禁止又は制限等の措置をとることができる。
(懲戒処分等)
第28条 教職員,学生等が,故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことにより,感染症予防法及び家畜伝染病予防法その他関連法規及びこの規程に違反したものと認められる場合,学長は,本学の定める規程等により,当該者に懲戒処分等を課すものとする。
附 則
この規程は,平成28年7月21日から施行する。
附 則(平成29年3月17日平成28年度規程第92号)
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この規程は,平成29年3月17日から施行する。
附 則(令和3年6月22日令和3年度規程第23号)
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この規程は,令和3年6月23日から施行する。
附 則(令和5年3月29日令和4年度規程第232号)
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この規程は,令和5年4月1日から施行する。
別表第1(第12条関係)
研究用微生物等のバイオセーフティレベルの分類基準及び分類については,WHO実験室バイオセーフティ指針,国立感染症研究所病原体等安全管理規程等に準じ,研究用微生物等の量や宿主内での増殖能,宿主からヒトへの伝播性に基づき,安全管理委員会で判断するものとする。
研究用微生物等のレベルの分類基準
研究用微生物等のレベルの分類基準
1 ヒトへの病原性の分類基準(BSL) | ||
通常の量の研究用微生物等を用いて試験管内で実験を行う場合の研究用微生物等のレベルについては,以下の基準によるものとする。 | ||
レベル1 | ヒト又は動物に疾病を起こす可能性のないもの | |
レベル2 | ヒト又は動物に対する病原性を有するが,実験従事者その他職員等及び家畜に対して重大な災害となる可能性が低いもの | |
レベル3 | ヒト又は動物に感染すると通常重篤な疾病を起こすが,一つの個体から他の個体への伝播の可能性は低いもの | |
(参考) | ||
レベル4 | ヒト又は動物に重篤な疾病を起こし,かつ,罹患者より他の個体への伝播が,直接又は間接に容易に起こり得るもの。また,有効な治療及び予防方法が通常得られないもの | |
(注) | ||
(1) | 国内に常在しない疾患等の病原体となる研究用微生物等については,より病原性の高い研究用微生物等と同等のレベルに分類する場合がある。 | |
(2) | ベクターを介さないと伝播し得ない研究用微生物等については,実験内容及び地域性を考慮の上,レベルを変更できるものとする。 | |
2 動物における感染性の分類基準(ABSL) | ||
ヒトに対する病原性は極めて低いが動物間において感染を起こす研究用微生物等を用いて試験管内で実験を行う場合の研究用微生物等のレベルについては,以下の基準によるものとする。ただし,実験の対象となる動物の範囲は,原則として,イヌ,ネコ,サル類,げっ歯類とする。 | ||
レベル1 | 動物への感染がほとんどないもの | |
レベル2 | 動物への感染は少なく,感染が起きても汚染は防ぎ得るもの | |
レベル3 | 動物への感染力が強く,感染が起きるもの |
別表第2(第13条関係)
研究用微生物等を用いる実験室の安全設備及び運営の基準
レベル1 | |
(1) | 通常の微生物学実験室を用い,特別の隔離の必要はない。(開放型実験台) |
(2) | 一般外来者の立入りを禁止する必要はない。 |
レベル2 | |
(1) | 通常の病原微生物学実験室を表示により限定した上で用いること。 |
(2) | エアロゾル発生のおそれのある実験は,必ず生物学的安全キャビネットの中で行うこと。 |
(3) | オートクレーブは,原則として実験室内に設置すること。ただし,合理的理由がある場合は,実験区域内に設置することができる。 |
(4) | その他指定実験室からの研究用微生物等の逸出を未然に防止するための適切な措置を講ずること。 |
(5) | 実験進行中は,一般外来者の立入りを禁止すること。 |
レベル3 | |
(1) | 廊下の立入り制限及び二重ドア又はエアロックにより外部と隔離された指定実験室を使用すること。 |
(2) | 壁,床,天井,作業台等の表面は,洗浄及び消毒可能な構造とすること。 |
(3) | 排気系を調節することにより,常に外部から指定実験室内に空気の流入が行われるようにすること。 |
(4) | 指定実験室からの排気は,高性能フィルターで除菌してから大気中に放出すること。 |
(5) | 実験は,生物学的安全キャビネットの中で行うこと。ただし,動物実験は,生物学的安全キャビネット又は陰圧アイソレータの中で行うこと。 |
(6) | オートクレーブは,実験室内に,原則として両面扉式のものを設置すること。 |
(7) | 実験室からの排水は,消毒薬又はオートクレーブで処理してから排出すること。 |
(8) | 実験従事者名簿に記載された者以外の立入りは禁止すること。 |
(9) | その他指定実験室からの研究用微生物等の逸出を未然に防止するための適切な措置を講ずること。 |
(10) | 指定実験室には実験従事者の安全監視機能(観察窓,監視カメラ,インターフォン等)を有すること。 |