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11第8回シンポジウム(オンライン)アクア・イノベーション拠点(COI)~環境にやさしい水処理技術でSDGsに貢献”社会を変える!”~全体システムの最適化に取り組む、プロジェクト最終年へプロジェクト概要ごあいさつ「革新的な造水・水環境システム」の実用化により、世界中の人々の生活の質向上と持続可能な社会の実現を目指す信州大学アクア・イノベーション拠点(COIプログラム)。2013年にプロジェクトがスタートし、企業と大学などの研究機関が持つ世界屈指の技術を融合させて基礎研究から社会実装の準備段階に至るプロセスを積み上げてきました。最終年の2021年度は、全体システムの最適化に取り組み、これまで培った技術と成果で水に関する世界的なニーズに応えていく、最終ステージへと進みます。新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない中、初のオンライン開催となった第8回シンポジウムは2月2日、約300人が参加して行われました。汚れがつきにくく薬品使用量削減が期待できる、環境にやさしい水処理膜の実用化のほか、アフリカに目を向け、地下水のフッ素汚染が深刻なタンザニアにおいて、フッ素吸着剤やフッ素濃度センサーの導入による水環境改善への取り組みが報告されました。アクア・ネクサスカーボン-プラットフォームの会員企業7社によるフリーディスカッションでは、新たなイノベーション創出につながるヒントや課題が提案され、「信大開発膜」の可能性への期待の高さをうかがわせました。本プロジェクトは残すところ1年余り。開発した膜の最大の特長である「ロバスト性」を生かして社会実装を目指します。2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する/持続可能な開発のための2030アジェンダ」は「人間」「繁栄」「地球」「平和」「パートナーシップ」の5つの要素で構成され、17のゴールを設定しました。1から6が人間に該当するもので、このうち水に関係するのは6番目。きれいな水を飲む、衛生的な環境で健康に暮らす-など人間が生きる上で基本的な部分に相当します。本プロジェクトにより、目標達成に寄与できることを願っています。県内には精密加工技術をはじめ国際的に優位な企業が集積しています。これらの企業がCOIの成果を取り込み、さらなる成長につなげられるよう県は支援しています。産学官連携の一層の活性化と産業創出に向かって取り組みが加速することを期待しています。世界に目を向けると、世界人口の40%以上に当たる36億人が水不足に瀕し、毎日何時間もかけて水汲みをする子どもたちがたくさんいます。こうしたグローバルな課題に解決策を出せるのがこの拠点です。世界の子どもたちや人々に水を通して笑顔を届けてほしいと思っています。当拠点では、きれいで安全な水が世界中の人々の生活を支える未来を実現するため、さまざまな研究開発を実践してきました。「海水淡水化」については、より環境に配慮した事業の展開に向けて実証を進めています。海外の地下水フッ素汚染に対応する研究では、フッ素除去やモニタリング技術の開発に取り組んでいます。20年度からは、水を使用する場所で浄化する「ポイントオブユース」や、新型コロナへの対応を研究テーマに加えました。北九州の実証プラントでは、カーボンナノチューブとポリアミドによるカーボン複合逆浸透(RO)膜(以下、信大開発膜)をモジュール化し、実海水を用いて淡水化の実験を進めています。卓越した耐ファウリング性(汚れにくさ)を有する信大開発膜の機能により施設の省エネ化や、使用する薬品の削減、海洋汚染の最小化を目指しています。新しい水処理技術に関する報告もあります。フラックス法による結晶技術で開発した無機吸着剤を用いて、汚染水から有害な重金属を選択的かつ高効率に除去して飲料水を作る研究です。水環境については、大気・海洋・陸域を統合した世界初の「水大循環モデル」を完成。関東域を対象に中長期の水循環シミュレーションを行いながら、街づくりの提案につなげます。信州大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています信州大学長 濱田 州博プロジェクトリーダー/日立製作所 大西 真人長野県産業労働部長 林 宏行氏科学技術振興機構 COI STREAM総括ビジョナリーリーダー代理 水野 正明氏 

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