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修士課程 医科学専攻

分子医化学

分野の概要

教育分野:分子生物学、医化学、病態医化学
研究分野:癌炎症(現象から、関与分子を特定する)
教室員は、医学、理学、工学部のバックグラウンドを持つスタッフから構成され、網羅範囲は広いです。癌の治癒を目指し、哺乳類(マウスーヒト)の癌の発生、増殖、転移の研究に焦点を当てています。特に癌が生着する土壌(癌が育ったり、転移が起きたりする、体の臓器の環境)のメカニズムを解明するため、原因・関連する分子を探して、その制御を目指しています。

 

研究テーマ

-癌の転移の前の組織の様子とは?

<なぜ研究するのか?>  癌が転移する前の時点で、離れた他の臓器の局所に、転移するのに有利な“転移予定地”を形成することを、マウスを用いた研究で明らかにしてきました。しかし、癌の転移がなぜ臓器の特定の局所におきるのかは分かっていません。さらに、そのような“転移予定地”が形成される現象が“人”においてもあるのか、確かめられていませんでした。

<研究で明らかになってきたこと>  担癌マウス(皮下や乳腺組織などに癌を実験的に移植したマウス)に青色の色素を静脈内投与すると、局所の血管から青色色素が漏れ出す現象(血管透過性の上昇)が起き、転移前の肺の局所に濃い青色のスポットが形成され(図1)、その部位に転移が起こることを見出してきました。この現象がどのような分子メカニズムにより生じているのかを調べる為、色素の漏出が多い部分と少ない部分からRNAを抽出して網羅的に遺伝子発現を比較しました。発現に差のある遺伝子の中で、血管透過性の上昇による炎症様反応に関係すると考えられる分子群(自然免疫で中心的な役割を果たしているTolll-like 受容体のひとつであるTLR4/MD-2複合体やケモカイン受容体など)に着目しました。この分子群の遺伝子欠損マウスを用いて担癌マウスを作製したところ、血管透過性の高い部位は殆ど見られませんでした。次に、野生型(遺伝子の正常な型)の担癌マウスに、蛍光色素で標識した癌細胞を静脈から入れると、肺の血管透過性が上昇している局所に一致して癌細胞が集まるのが観察されましたが、遺伝子欠損した担癌マウスでは認められず、結果として癌の転移は抑制されました。 さらに、転移を伴う悪性の癌で亡くなった患者さんの転移のない部分に、担癌マウスでみられた“転移予定地”と大変良く似た炎症性反応が起きている可能性を見いだしました(図2)。今後、人において、癌転移の予測や予防的な治療の可能性につながることが示唆され、現在研究しています。

スタッフ

教授

平塚 佐千枝

准教授

富田 毅

助教

加藤 真良

学生数

修士課程学生数募集中

研究室の所在及び連絡先

信州大学医学部基礎棟 4階
電話:0263-37-3296
メールアドレス:hira(at)shinshu-u.ac.jp

主要な成果/Major Publications

  1. Hiratsuka S., Tomita T., Mishima T., Matsunaga Y., Omori T., Ishibashi S., Yamaguchi S., Hosogane T., Watarai H., Omori-Miyake M., Yamamoto T., Shibata N., Watanabe A., Aburatani H., Tomura M., High. KA., Maru Y. (2018) Hepato-entrained B220+CD11c+NK1.1+ cells regulate pre-metastatic niche formation in the lung. EMBO Mol. Med. e8643, doi: 10.15252/emmm.201708643
  2. Hiratsuka S., Ishibashi S., Tomita T., Watanabe A., Akashi-Takamura S., Murakami M., Kijima H., Miyake K., Aburatani H., Maru Y. (2013) Primary tumours modulate innate immune signalling to create pre-metastatic vascular hyperpermeability foci. Nature Communications 4: Article number: 1853 doi:10.1038/ncomms2856.
  3. Hiratsuka S, Goel S, Kamoun WS, Maru Y, Fukumura D, Duda DG, Jain RK. (2011) Endothelial focal adhesion kinase mediates cancer cell homing to discrete regions of the lungs via E-selectin up-regulation. Proc Natl Acad Sci U S A. 108: 3725-3730.
  4. Hiratsuka S, Duda DG, Huang Y, Goel S, Sugiyama T, Nagasawa T, Fukumura D, Jain RK. (2011) C-X-C receptor type 4 promotes metastasis by activating p38 mitogen-activated protein kinase in myeloid differentiation antigen (Gr-1)-positive cells. Proc Natl Acad Sci U S A. 108: 302-307.
  5. Hiratsuka S, Watanabe A, Sakurai Y, Akashi-Takamura S, Ishibashi S, Miyake K, Shibuya M, Akira S, Aburatani H, Maru Y. (2008) The S100A8-serum amyloid A3-TLR4 paracrine cascade establishes a pre-metastatic phase. Nat. Cell Biol. 10: 1349-1355.
  6. Hiratsuka S, Watanabe A, Aburatani H, Maru Y. (2006) Tumor-mediated upregulation of chemoattractants and recruitment of myeloid cells pre-determines lung metastasis. Nat. Cell Biol. 8: 1369-1375.
  7. Hiratsuka S, Nakamura K, Iwai S, Murakami M, Itoh T, Kijima H, Shipley JM, Senior RM, Shibuya M. (2002) Involvement of MMP9 induction by Vascular Endothelial Growth Factor Receptor-1 in lung specific metastasis. Cancer Cell 2 : 289-300.
    (転移前土壌を発見した最初の論文)