研究分野は高分子化学(機能性高分子材料の構築)。担当授業科目はほとんどが自分の専門外であるので,自分の専門とは何か自分でも見失いつつある。研究はいつのまにやら,お金の掛からないレベルのものに落ち着いてしまった。最近,教育(授業)に力を注いできたが,E-Learningの出現で一気にレベルアップしたと自負している。大学院時代,先輩も後輩も白川英樹先生との共同研究テーマをもらって修論の研究をやっていた。アンプルの中でピカピカに輝いた電導性ポリアセチレンのフィルムが鮮烈な印象として残っているが,当時,そのテーマがうらやましいなどとは思わなかった。しかし,今はあのようなインパクトのある素材を自分でも生み出したいと渇望している。
■ 担当授業科目(4/11/2008)
授業科目名
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学期
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単位
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コメント
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1
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微分積分学II
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1年後期
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必修2
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平成17年度より担当している。私の専門は高分子化学であるが,専門科目ではそれに該当する科目(講義)がない。それで,数学を教えている方がずっと自分の専門分野に近いような気さえする。なぜなら,高分子化学を勉強するのに微積が必要であるからだ。応用化学の茫洋とした感じに対して,数学は明快な答えがある世界である。授業としては非常に教えやすいし,充実感をともなう。学生諸君もよく頑張ってくれる。いろいろな意味で,担当する全授業科目のなかでもっとも完成度が高い(わずか2年目であるけれどもそうである。その反面何年やってもそれほどでもない授業科目もある)。なおこれは松本キャンンパスでの開講科目である。山あり谷ありの往復80数キロをドライブしている。不謹慎かもしれないが,ドライブは楽しい。こういう科目こそE-Learning化すべきと考えているが,とりわけ数学関係科目(1年次)でE-Learning化しているのは私だけのようである。E-Learning化すれば諸々の教育上,人事上の課題はかなり解決すると思うが,教員の熱意は乏しいと言わざるを得ない。熱意以上に必要なものは,時間と体力であるかもしれない。平成20年度より化学・材料系の課程に分かれていない学生(定員110名)を2クラスに分けて全員分を担当する。授業日は月曜日で,その日は松本で過すことになる。
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2
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素材化学ゼミナール I
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2年前期
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必修2
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平成19年度より諸般の事情により講義形式に変更。各教員が1回ずつ講義を担当する。昨年度はISO14001の進捗状況を説明した。今年度は繊維について述べるつもり。
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3
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素材化学ゼミナール II
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3年前期
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必修2
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4
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物性化学 I
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3年前期
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選択2
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授業内容は統計熱力学である。アトキンスの物理化学を教科書としている。いろいろ工夫してきたが,学生諸君はもうひとつ興味がわかないようである。その責任は私にあると思う。そうは言うものの,私も専門外であったが,何年も教えているとようやくこの分野の一端に触れたという感触が出てきた。教える難しさを感じている。平成18年度からはSpartanを使ってもっと視覚的な授業にしたい。(平成18年度入学生より選択科目に変更される.)
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5
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コロイド化学
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3年前期
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選択2
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「専門分野に近いが専門外である」と言っていたが,最近では高分子とコロイド粒子の相互作用を研究テーマに取り上げているので,専門分野のひとつになりつつある.平成8年度より担当している。平成8〜14の7年間は「エベレット コロイド科学の基礎」(化学同人)を教科書に使った。これがよくなかった。エベレット教授は高名な熱力学の専門家であるが,彼もコロイドは専門ではなかった。また,この科目の他に「界面化学」(他学科教員担当)があり,界面に関するところは意識して避けなければならなかった。ところが,数年前にそのくびきがとれた。其れと同時に教科書も,北原文雄「界面・コロイド化学の基礎」に変えた。これがうまくいったと自負している。さらに,パワーポイント化,E-Learning化して改善を重ねてきた。専門外の授業科目を担当するものは教科書への依存度がきわめて高い。そこで教科書選びを失敗するとまともな授業はできない。変な教科書は即刻変更すべしという教訓を得た。
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6
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地球環境と資源・エネルギーの科学 (教職演習)
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3年前期
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選択2
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平成14年度に開設された科目で当初より担当している。3人の教員で分担してきた。つまり,5回分をひとりが担当している。当然,専門外である。理系の知識と文系の素養が大いに必要である。ほんとうのところ私などにこれを担当する資格まったくなしである。それで他人の著作を使って伝道師になろうとしているに過ぎない。平成14年度:武田邦彦「リサイクルしてはいけない」,平成15年度:燃料電池について,平成16年度:勝木渥「物理学に基づく環境の基礎理論」,平成17年度:渡辺正「これからの環境論」。この科目は特に,授業の成否は教科書に依存していると言える。渡辺正氏の本は非常によかった。世の中の風説,例えば,『ダイオキシンはあぶないからごみは燃やすな!』を鵜呑みにしていると,あとで大恥を掻くことになる。したがって,教科書の選択はきわめて大事になる。「環境論」など学問としてまだ認知もされていない。そのような中で授業を成立させるのは至難の業であるとおもう。何百年何千年の歴史のある数学なら,教科書は明治期のものとさほど変わらないと思うが,大きな違いである。いずれにしろ,普通の環境論に対して異を唱える論客の方々の著作を教科書として取り上げてきている。平成18年度より,もし担当時間が増えれば,石油などの資源・エネルギーの分野も題材として取り上げたい.2006 平成19年度より谷上ひとりによる担当科目になる.本来の教職演習のあるべきスタイルを求めていくことにする.教職演習とは模擬講義を学生にやっていただくという方針で臨むことにする.演習科目であり講義科目ではない.教員よりも学生がしゃべる機会を多くしていく.素材開発化学科の専門科目でもあるが,主体は教職演習である.取り違えないように注意していただきたい. 平成20年度より後期から前期に移行した,個人的に前期後期のバランスをとるため。 |
7
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素材化学実験 III
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3年後期
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必修2
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この科目は学部で唯一私の専門分野の科目(高分子化学)である。昭和57年より教えている24年目の授業(実験)である。最初の十数年は助手時代であるので。全力を投入した。教科書を毎年書き換えてきた。その熱意も今はそれほどでもないのは仕方がないことであろう(授業科目が増えたたため)。やはり新しい若い世代の助手の方と交代した方がよいかもしれない。ほとんど金をかけずに実験の授業を支えてきたが大変なことであった。最近ではデータの整理,レポートの作成はすべてパソコンになり,実験の補助として数人のティーチングアシスタント(TA,学生)がつくようになった。隔世の感がある。 |
8
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科学英語
「谷上研究室卒論修論」 |
4年前期
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必修1
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谷上研究室ゼミナールのうち雑誌会については1年間を通じてこの科目のサイトでE-Learningを実施する。ただし,院生も参加する。
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9
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特別演習
「谷上研究室卒論修論」 |
4年後期
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必修2
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平成18年度より4年生の輪読会を設ける(谷上研究室4年生ゼミナール)。教科書は井上祥平著「はじめての高分子化学」である。大学院の入試科目で高分子化学を選択できる場合(他大学)には受験勉強にもなるであろう。信大の素材開発化学専攻の試験科目には含まれていない。1年を通じてこの科目のサイトでE-Learningを実施する。
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10
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卒業研究
「谷上研究室卒論修論」 |
4年通年
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必修6
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谷上研究室の本業に係わる授業科目である。他の講義・演習・実験とは全く趣きを異にする。2月に配属者を決定し,4月に卒論テーマを決める。あとはひたすら研究室に籠って実験・ディスカッションの日々である。谷上研究室ゼミナール(月例報告)で研究発表していただく。最後には卒論作成と卒論発表会がある。院に進学した場合は春の学会(高分子学会)で自ら研究発表していただく。月例報告を中心にE-Learning化していく予定である。その他,「テクニカルレポート」(実験のハウツーについての細かな手引書)も作成していただき掲載する。
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11
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構造制御化学特論
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大学院修士
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選択2
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平成19年度より,電気学会編、「誘電体現象論」,電気学会(1973)の第2章「誘電分極,誘電率およ誘電損」. |
12 | 構造制御化学演習 II
「谷上研究室卒論修論」 |
大学院修士 | 選択2 |
修士課程の研究室ゼミナール(雑誌会)。
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13 | 構造制御化学特別実験 II
「谷上研究室卒論修論」 |
大学院修士 | 選択4 |
修士課程の修論作成のための実験。
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14 | 繊維材料構造解析特論 | 大学院博士 | 選択2 |
受講希望があれば随時開講する.平成19年度は植木君(平井研D3)の希望があり開講中(4月より).原則として月水の夜7:00より90分ずつ開講.といっても二人での勉強会.教科書は電気学会編、「誘電体現象論」,電気学会(1973)の第2章「誘電分極,誘電率およ誘電損」.
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上表の7~11が高分子化学関連になる(谷上研究室に所属すれば)。なお,平成18年度の目標は『卒論・修論の強化』としたい。それにともない,高分子化学の勉強を重視する(本業への回帰)。この数年,各授業科目の準備(とくに,パワーポイント化,E-Learning化)で本職が疎かになっていた。だいたいこれらの土台が形成されたので,研究(高分子化学)中心に戻す。
→ 参考:素材開発化学科(素材開発化学専攻)の全授業科目をカテゴライズした図(PDF).
■ 担当授業科目時間割(4/11/2008)
前期
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1
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2
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3
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4
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5
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6 | ||
月
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物性化学 I(B3)
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火
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谷上研究室
雑誌会(B4,M) |
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水
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コロイド化学(B3)
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繊維材料構造解析特論(D) | ||||
木
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構造制御化学特論(M)
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教職演習(地球環境と資源・エネルギーの科学)(B3) | |||||
金
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谷上研究室
輪読会(B4) |
後期
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1
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2
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3
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4
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5
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月
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(上田→松本)
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微分積分学II クラス1(B1)
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微分積分学II クラス2(B1) | (松本→上田) | ||
火
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谷上研究室
雑誌会(B4,M) |
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水
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谷上研究室
輪読会(B4) |
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木
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素材化学実験 III
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素材化学実験 III | 素材化学実験 III | |||
金
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素材化学実験 III
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素材化学実験 III | 素材化学実験 III |
■ 卒業研究で谷上研究室を希望している方へのメッセージ(1/28/2006)
平成16年度卒研生のK君(他大学大学院在籍中)から最近メールをもらったのですが,以下のような一文がありました:
『・・・卒論に四苦八苦していたあの頃を懐かしく感じます。今考えてみるとあの頃の「自由な研究」,「先輩たちとの日々のディスカッション」,「共に励む仲間」となかなか充実した日々を送っていたなあと思います(もちろん,今も充実していますが)・・・』
私がいろいろ言うよりも,ずっと研究室の本当の雰囲気が伝わると思います。彼の三つ上げてくれた特徴は,私が意図してつくったものなどとおこがましいことは申し上げません。伝統として根付いているのかどうかは定かでありませんが,学生諸君が自然に築き上げたものです。私がやったことは,必要以上に口を挟まないということでしょうか(結果論)。助手の頃は若くて時間があるので,勢い余っていろいろと自分の意のままに動いてくれることを主眼においておりましたが,授業で忙しくなるととても細かい指導など無理です。それが幸いして,上記のようになったと思えます。もちろん,毎日マンツーマンで指導を望む学生さんがいたならば,それに応えるつもりです(今までもそうでしたし,これからもそうです)。しかし,学生諸君は今も昔も,教員から指図を受けることをものすごく嫌います。わたしも,その力に押し流されて,気がつけば干渉することを控えるようになってしまっていました。干渉(細かい指導)をしないと研究の効率は落ちます(こちらの勝手な理解です)。しかし,しないと学生の自律も促されます。そして何よりこちらも余分な軋轢を避けることもできます。それで,アドバイスをあえて控えた結果,本人が相当遠回りをすることになっても構わないと思うようにもなりました(卒論の場合はあまり遠回りすると時間切れで目的地と思しきところにたどり着けないというジレンマに陥りますが)。ただどんな指導態勢の下でも学生にとって必要なことは,先輩や同輩とコミュニケーションできる力です(以前は教員とのコミュニケーションの必要性を第一に唱えていましたが,全く思うようにはなりませんので,なかばあきらめ気味です。それで,来年度はE-Learningを卒業研究に試行的に導入してみます。そばにいる教員とメールでコミュニケーションをとるようなもので,一見,違和感があります)。リーダーシップも必要でしょうか。研究室に入って伸びるためには3年生までの学業成績は必ずしも優秀である必要はございません。コミュニケーションの力が必要です。これを身につけることは簡単なようで,通常の学業成績を上げるよりは難しいかもしれません。
変なことを先に言ってしまったかもしれませんね。谷上研究室は応用化学の端っこに位置します高分子化学をやっております。高分子化学が好きか,好きになれそうであるかよく確認してください。といっても高分子化学のどういうことをやるのかわからないので,こういう基準を提示しましても意味がないかもしれませんね。私の担当しました素材化学実験 III が少しでもおもしろいと思ったら,高分子好きになれるでしょう。私は高分子系の学科を卒業していますので,どこの研究室を選んでも高分子だったので,君たちのような選択のときの迷いがそれほどはなかったと思います。ご質問のある方にはいつでも応じますのでお越し下さい。
※追記(8/7/2006)谷上研究室は大学院受験者のために特別な便宜は図りません。試験前の月例報告会,雑誌会も同じように発表していただきます。自宅で夜,受験勉強をしていただくだけで試験準備は十分です。それでも受からないようでは大学院に向いていないと言うしか無いです。最近のわるい傾向を断ち切るために警告させていただきます。
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