信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 水分補給を伴う運動負荷後の含嗽が口腔内環境に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.37 Vol.37

 要旨

 アスリートの平均う蝕指数は一般人に比べて高いことが既に報告されている.運動に伴う口渇,スポーツドリンクの過剰摂取,間食や補食の常態化,肉体疲労によるブラッシングの怠慢などがう蝕のリスクを引き起こすと考えられているが,その詳細は未だ不明である.そこで本研究は,運動中の水分補給が唾液分泌量,唾液pH,唾液緩衝能に与える影響について明らかにすることを目的とした.健康なスポーツ愛好家10名(男性5名,女性5名,平均年齢22.4歳)に対し,運動負荷試験を自転車エルゴメータにより実施した.運動は最高脈拍80%の有酸素運動を30分とし,水分補給源と運動直後の含嗽については,(1)スポーツドリンク摂取,含嗽なし,(2)スポーツドリンク摂取,含嗽あり,(3)スポーツドリンク(ミネラルウォーターにて2倍希釈)摂取,含嗽なし,(4)スポーツドリンク(ミネラルウォーターにて2倍希釈)摂取,含嗽ありの4条件とした.水分補給量は1回あたり150mlを実験中に4回,計600ml摂取させた.実験前,実験直後,30分後,60分後の計4回唾液採取を行い,唾液分泌量,唾液pH,唾液緩衝能を測定した.いずれの条件下においても,唾液分泌量は実験を通してほぼ変化はなかった.条件(1)において運動後の唾液pHが低下した.条件(1),(2)においては運動後の唾液緩衝能が有意に低下した.条件(3),(4)においては,運動前後で唾液分泌量,唾液pH,唾液緩衝能のいずれも有意な変化は見られなかった.以上の結果より,運動時の水分補給源と摂取後の適切な含嗽は,口腔内環境に影響を与えることが示唆された.

「デサントスポーツ科学」第37巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 高橋敏幸, 池川麻衣, 上野俊明
大学・機関名 東京医科歯科大学大学院

キーワード

含嗽水分補給唾液スポーツドリンク運動