暑熱環境下における聴覚情報処理および高次認知機能の評価
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.37 Vol.37】
要旨
高体温は身体的・心理的パフォーマンスに影響すると言われているが,客観的な評価はほとんどなく,特に脳機能への影響は不明である.本研究では脳波事象関連電位を用いて,暑熱負荷時の認知機能を客観的に評価した.16名の被験者が参加し,2条件(暑熱負荷および常温負荷)で聴覚オドボールテストを暑熱負荷前,食道温が0.8℃および2.0℃上昇した時,暑熱負荷終了時に実施し,反応時間および脳波事象関連電位を測定した.すべての実験を通して脳波が正確に測定できた13名のデータを解析対象とした.反応時間は常温負荷条件では変化しなかったが,暑熱負荷条件では短縮し,同様にP300成分の潜時も短縮した.しかし,認知処理系の活動を反映するP300の振幅は高体温時に低下した.聴覚機能を反映するN100は潜時および振幅とも両条件ともに変化は見られなかった.これらの結果から,高体温は聴覚機能には影響しないが,反応実行系を促進するものの,認知処理系は低下させる可能性が示唆された.
「デサントスポーツ科学」第37巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
高体温は身体的・心理的パフォーマンスに影響すると言われているが,客観的な評価はほとんどなく,特に脳機能への影響は不明である.本研究では脳波事象関連電位を用いて,暑熱負荷時の認知機能を客観的に評価した.16名の被験者が参加し,2条件(暑熱負荷および常温負荷)で聴覚オドボールテストを暑熱負荷前,食道温が0.8℃および2.0℃上昇した時,暑熱負荷終了時に実施し,反応時間および脳波事象関連電位を測定した.すべての実験を通して脳波が正確に測定できた13名のデータを解析対象とした.反応時間は常温負荷条件では変化しなかったが,暑熱負荷条件では短縮し,同様にP300成分の潜時も短縮した.しかし,認知処理系の活動を反映するP300の振幅は高体温時に低下した.聴覚機能を反映するN100は潜時および振幅とも両条件ともに変化は見られなかった.これらの結果から,高体温は聴覚機能には影響しないが,反応実行系を促進するものの,認知処理系は低下させる可能性が示唆された.
「デサントスポーツ科学」第37巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 芝﨑学, 難波真理, 中田大貴 |
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大学・機関名 | 奈良女子大学 |
キーワード