信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 発汗による含水が布の力学的性質に与える影響と衣服の機能性

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.1 Vol.1

 緒言

 一般に着用中の衣服は,環境の温湿度変化,身体からの発汗,雨雪などの気相,液相水分によってその含水状態が変化する.衣服を構成する布のこの含水率変化は,その力学的性質を大きく変化させ,これらは,着心地はもとより,身体の生理衛生的機能,衣服の外観,形態などあらゆる衣服の機能に影響をおよぼす.特にスポーツウェアの場合,多量の発汗による含水が衣服素材の性質におよぼす影響が大きいと考えられる.
 従来から布の力学的性質は,標準温湿度条件下での試験がJIS規格において規定され慣行されてきている.しかし,スポーツウェアの場合は発汗にともない,布は水分を含水した状態で運動動作による変形を受ける.このときの力と変形の関係,すなわち力学的性質は前述の条件下における性質とは異なり,これらが運動機能におよぼす影響は大きいと考えられる.親水性繊維から成る布は勿論のこと,疎水性の合成繊維布においても,布の組織や繊維表面にかかえる水は布の性質を大きく変化させるであろうことが予想される.
 本研究では,気相又は液相水分の含水によって,布の基本的な力学的性質およびそれに関連する物理的性質がどのように変化するか捉え,運動動作に関連する布の振動持性,表面持性の変化についても計測する.さらに,くり返し着用によって生じる.性能劣力の様相についても計測し,これらのスポーツウェアとしての衣服機能との関連について検討する.そして,身体運動機能をさまたげず,スポーツ活動により適応し,かつ心身ともに快適に着用でき,さらに耐久性の面からも総合的な評価のなし得る衣服素材設計の基礎的資料を得ることを目的としている.

「デサントスポーツ科学」第1巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 丹羽雅子, 松生勝
大学・機関名 奈良女子大学

キーワード

着心地発汗親水性繊維疎水性合成繊維振動持性表面持性