信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF リュックサックの改良に関する研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.1 Vol.1

 緒言

 衣服には,しばしば物を運ぶ機能が付属している.例えば,和服のふところ,たもと,洋服のポケットなどである。野外スポーツ衣服では特に重要である.
 アラスカのゴールドラッシュの時代に多くの人々に愛用されて,シアトル市のFilson社で今も販売されている羊毛製のCruisers・Jacketsには,外側のポケット7個,パッチポケット4個,マフポケット2個,リアキャリングポケット1個,合計14個のポケットが付いている.またフィッシングコートには,たくさんのポケットのあることはよく知られている.しかし,このようなポケットには容量の制限があるので,さらにずだ袋,ショルダーバッグやおいずる,背負子,リュックサックのように身に付ける袋が必要になる.
 このように考えると,リュックサックはスーツケースなどと違って,衣服の一部である.
 日本にリュックサックがやって来たのは,明治の後半のことである.現在,最もポピュラーなキスリング型リュックサックは,ヨーロッパの小さなリュックサック屋であるヨハネス・ヒューク・キスリング氏によって考案・製作された.それを,昭和初期に松方三郎氏が持ち帰り,国産化したものである.キスリングの材質は綿帆布である.その長所は,中味を出してしまえば小さくたたむことができ,狭いテントの中でもじゃまになりにくいことである.戦後,キスリング型のこのリュックサックに改良が加えられ,大型化し,日本的登山にあった完成形となった.そして,登山者のほとんどがキスリング型リュックサックを用いるようになった.しかし,キスリングが大型化して普及するようになると,手のしびれ,背骨の異常を訴える者も多く,青少年の野外活動のひとつの問題点となっている.
 そのリュックサックに最近になって,アメリカでインディアンの背負子にヒントを得てバックパックが発達した.これは,フレームを持っているのが特徴で,硬い構造を持っているといってよい.従来,我国で普及しているキスリング型リュックサックが柔らかい構造を持っているのと比べて,構造上の違いがある.我々はまず,両者の機能上の比較を試みた.

「デサントスポーツ科学」第1巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 安田武*1, 平井一正*2, 塩満勝麿*1, 井尻登喜子*1
大学・機関名 *1 武庫川女子大学, *2 神戸大学

キーワード

リュックサックバックパック