信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF サーマル・マネキンによる運動中の被服の局所別熱抵抗に関する研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.1 Vol.1

 はじめに

 着衣の熱抵抗は,皮悶表面と気温との温度勾配を多重層の(布+空気)を通過する熱流量で除したものであらわされる、このとき,熱流量を生体のエネルギー代謝の計測によって求め,クローIndexで抵抗をあらわす慣習がある.クロー値は,この着衣は,“気温20℃,気湿50%,風速0.1m/secの環境下で,安静椅坐で快適さをうる着衣の熱抵抗を1”とするとき,その何倍に当たるかという数値である.
 しかし,メーカーが衣服をデザインするときは,形状,ゆとりの面から,“身体のどの部分がどれだけの抵抗をもつことになるか”,あるいはユーザーの衣生活で,“どのように衣服を重ねて着たら全体として抵抗の部位差を少なくできるか”などの疑問にこたえるためには,着衣の熱抵抗を部位別に評価する必要がある.これには生体実験は不都合で,その代わりに,実物大のサーマル・マネキン1)を用いて物理的熱抵抗値(熱オーム)が測定される.
 筆者は,いままでにサーマル・マネキンを用いてスポーツウエア,ワンピースについて,異なったサイズを着衣したとき,また,そこで姿勢を変化したとき2,3)の着衣の局所別熱抵抗を計測してきた.これからは,運動をしたときの熱抵抗の資料も必要とされるであろう.このとき,生体は運動に伴って発汗するので,着衣の物理的熱抵抗は,着衣の揺動にもとづく換気(フイゴ作用)を含む幾何学的構造変化の結果としての熱抵抗と,布材料にもとづく水蒸気あるいは凝縮水透過抵抗の交互作用によって変動することになる.
 そのため,サーマル・マネキンを用いるときは,運動するマネキンおよび発汗するマネキン(実際には凝縮水を含む肌着を着たマネキン)に分けて,熱移動のメカニズムを解析することになる.将来は,対向気流と運動と発汗作用の総合として熱抵抗を求めなければならない.
 そこで本研究では,運動して着衣が揺動したために生ずる熱抵抗の変化に注目し,ツーピースで下肢の分割されるスポーツウエア,ウエストベルトの有無を区別したワンピースウエアを例にとって,局所別熱抵抗を計測し,運動速度と着衣のフイゴ作用との関係を次のように検討した.

「デサントスポーツ科学」第1巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 花田嘉代子
大学・機関名 大阪市立大学

キーワード

サーマル・マネキンクロー値スポーツウエア