信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 種々の環境条件下で運動時事故死の原因を考える

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.2 Vol.2

 はじめに

 最近,ジョギングなど生活の中に運動を取り入れる者が多くなり,それにつれて,運動時の事故死も増加している.Thompson 1)は,ランニング中に死亡した18例のうち,13例は冠動脈疾患により,他は原因不明であった,と報告している.また,黒田2)は,ランニング中に死亡した21〜69才までの男性13例のうち,7例は外気温28〜35℃の6〜8月に起こったことを報告している.これらは,いずれも心不全による死亡事故であったが,自覚症状も心疾患の診断もなされていない場合が多かった.このような運動事故に関する報告から,運動時の事故死と環境条件との関連が明らかにされた.
 高温多湿環境下では,皮膚血流量が4倍以上にも増加し3),発汗量も増す.したがって,高温多湿環境下での運動時には,発汗量や皮盾血管床などの拡大がさらに増し,その結果,循環血液量が減少し,ショックに陥いる危険のあることは十分に考えられることである.
 本研究は,人工気候室により種々の環境温度を設定し,その環境温度下でトレッドミル走を負荷し,心拍数,酸素摂取量,血圧,血清電解質,浸透圧および血猿アルドステロン,アンギオテンシンや尿量,尿中電解質排世量などを観察し,これらのパラメーターから,運動時の生体に及ぼす環境温度の影響を把握し,運動時の事故防止を考える際の資料を得ることを目的になされた.

「デサントスポーツ科学」第2巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 鈴木政登, 塩田正俊, 中嶋孝之, 井川幸雄
大学・機関名 東京慈恵会医科大学

キーワード

ジョギング冠動脈疾患運動事故人工気候室トレッドミル走