信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 心身障害者のトレーニング可能性 ―水泳訓練における脳性まひ児の運動強度の検討―

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.2 Vol.2

 はじめに

 疾病の治療や予防,あるいは健康の維持増進の手段として,水中運動が処方される.とくに,循環器疾患,筋神経疾患,リューマチなどの慢性疾患のリハビリテーションとして,これが有効であることが確かめられている.最近では,精神病やぜんそくなどの治療法に水泳運動が脚光を浴びており,出産を円滑に行うための妊婦水泳さえも実施されるに至った.
 一方,脳性まひ児に水泳運動を課することは,不随意運動をつよめ,姿勢のバランスを失わせるとの理由から,従来これは不適当な運動とみなされてきた.しかしながら,脳性まひ児を水中に入れれば,重力の影響をまぬがれることとなり,浮力を利用することにより,四肢を動かしやすくなるのは当然といえよう.さらに,水中に身を沈めることは,水圧の影響による胸廓の圧迫に絶えず抵抗することになり,知らずして呼吸訓練をおこなうことからも,水泳運動による治療効果の大きいことが期待される.しかし,水泳運動の至適運動強度に関しては明らかにされてない,
 そこで本研究では,水泳運動における脳性まひ児の運動強度を把握することを試みた.具体的には,運動強度の生理的指標として,心拍数変動を手がかりとした.心拍数は,呼吸循環機能を示す指標のなかで最も測定が容易であり,しかも信頼性の高いことが知られている.さらに,心拍数と酸素摂取量との間には直線関係が成立するので,連動中の心拍数変動を測定することによって,運動の強度を推定することが可能になってくる1).水泳運動中の心拍数変動についてはすでに報告した11,12).
 今回は,独立歩行の可能な脳性まひ児1名について,トレッドミル歩行による最大酸素摂取量を測定し,水泳運動中の運動強度を考察した.

「デサントスポーツ科学」第2巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 矢部京之助*1, 三田勝巳*1, 青木久*1, 見松健太郎*1, 篠田達明*2, 高松潤子*3, 宮村実晴*4
大学・機関名 *1 愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所, *2 愛知県心身障害者コロニーこばと学園, *3 NASスイムスクール, *4 名古屋大学総合保健体育科学センター

キーワード

水中運動慢性疾患脳性まひ児トレッドミル歩行最大酸素摂取量