信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 被服内気候の快適性に関する多変量的解析

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.2 Vol.2

 緒言

 被服,寝具類の快適性は,繊維製品設計を決定する重要な一要因である。人間の感情の本質は快,不快であり,この快適性は,「非常に快適」から「非常に不快」まで一方向の変化をし1)図1に示したような要因から形成されているものと思われる.
 すなわち,環境条件,人・体の活動状態,被服,布の性質などの物理量として扱いうる因子と,被服の色,柄,個人の噌好,性格,ファッション感覚などの物理量としては表しえない因子とが,用途別に個々人の過去の経験,イメージ,先入感,ライブスタイルによるフィルターにかけられ,快適性が形成されているものと思われる.
 従来,快適性に関する研究は数多く見られる.被服の運動機能性,被服による人体拘束性に関してはIbrahim2),Kirk3)らによって,風合いに関してはHowarth4),松尾5)らの因子分析による解析,川端,丹羽ら6)の風合いを力学的特性で捕らえる手法などにより,かなりの解明がなされている.
 しかしながら,快適性を形成する主要な部分を占めていると思われる水分,熱のトランスポート特性に関する研究は,衣服内気候測定法を検討したもの7,8),快適性と生体要因,衣服内気候要因との関連性を検討したもの9~11),保温性,熱・伝導率,熱流量12),熱遮断能13),吸放湿性14,15),透湿性,吸水性などの一つの特性を個々に取りあげ,定常状態の特性を検討したものなど数多く見られるが,これらはいずれも快適性を総合的に把握したものとは言い難い.
 本研究は,物理量として扱いうる要素としての吸放湿,透湿,吸水,保温などの水分,熱のトランスポート特性に関する因子を,還境条件,人体の活動条件下で総合的に関連づけて解析することを目的とする.最終的には,快適性の観点から,素材,布構造,被服造形のあるべき姿,用途別に最適なテキスタイルデザインを提案することを目標としている.本研究では,快適性の内容を明らかにするため,ビジネスソックスを用いて行った着用試験の結果と,各種素材の吸放湿性,保温性,吸水性などの物理特性を明らかにし,これらの物理量を多変量説明変数,着用試験の結果得られた官能量としての快適性を目的関数とするときの多変量解析の結果を報告する.

「デサントスポーツ科学」第2巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 内山生, 土田和義
大学・機関名 京都工芸繊維大学

キーワード

快適性衣服内気候テキスタイルデザイン着用試験