信州大学 繊維学部技術データベース

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PDF 運動と栄養が高脂血症及び高血圧症に及ぼす影響

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.2 Vol.2

 近年の工業,経済,文化の著しい発達につれ,我々の日常生活は大きく変化し,欧米化,多様化が目覚ましい.しかし疾病では,我国の死因の上位を脳血管疾患,心疾患が占め,いずれも動脈硬化症を主因として発症する成人病であり,文明病とさえいわれている.このように,国民の健康に好ましくない影響を与える健康阻害因子の存在も大きくなってきている.
 その因子の一つとしては,運動不足があげられる.労働の機械化,交通の発達,人口の過密化,住宅事情の悪化など環境条件の著しい変化に伴い,日常生活が屋内中心の静的なものに変わり,活動量の低下がもたらされているためである.
 第二の因子は栄養であろう.日常生活の変化に伴い,食生活も改善され,食糧事情の進歩と相まって,摂取する食物の質的な変化は著しく1),青少年の体位も一段と向上した2).しかし,この飽食の時代の中に,過剰栄養や食生活の偏りなどのアンバランスが指摘されるなどの問題を生じている.
 動脈硬化症は高脂血症,高血圧症の関与が特に大きいが,最近は小児にも肥満症や高コレステロール血症が増えてきており3),やはり,栄養摂取の偏りと運動不足によるとされ,いずれは成人病につながるものと危険視されている.
 これらのことから,我々の健康を維持し増進を図るためには,運動と栄養は不可欠な要因であり,この相互関係を明らかにする必要がある.特に,動脈硬化性疾患の予防を目的として,運動と栄養面から検討することは大きな意義があると考えられる.
 既に我々は,運動と栄養に関し,健康諸要素,例えば発育,成熟,肥満,老化,寿命などに及ぼす影響につき報告し4~6),高脂血,高血圧に関し,運動の効果7~11)や,多くの食品のコレステロール低下作用12~14)や血圧降下作用15)についての成績を明らかにしてきた.最近は,脂質代謝についてはリポたん白代謝の面から研究が進められるようになり,特に低比重リポたん白(LDL)の動脈硬化性に対し,高比重リポたん白(HDL)の抗動脈硬化性が注目され,運動や食品の面からHDL中コレステロールの上昇に与える影響が検討される動向にある.
 そこで,本研究において,動物実験では,コレステロール,特にHDLコレステロールに及ぼす運動負荷と栄養負荷の追求を中心とし,血圧降下作用についても食品の面から検索を進めた.さらに被験者試験でそれらの効果につき,応用,確認することができたので報告する.

「デサントスポーツ科学」第2巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 辻悦子, 西牟田守, 芦沢志津子, 鈴木慎次郎
大学・機関名 国立栄養研究所

キーワード

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