信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF スキー外傷の予防並びに治療に関する研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.3 Vol.3

 過去25年間に取り扱ったスキー外傷46,173例の統計的観察を行い,スキー用具の変遷とスキー外傷の推移との関係について調査しうまた,スキー外傷に関係する因子を知るために,外傷者にアンケート調査を行った.
 最近頻発する下腿骨boot-top骨折の発生機転究明のため,2次元光弾性実験を行い,外傷性肩関節前方脱臼に関して脱臼時関節造影を施行し,その型分類と予後の関係を調査し,次の結果を得た.
 1)スキー外傷の種類は,捻挫16,512例(42.3%),骨折14,311例(26.7%),切挫創10,063例(21.8%),打撲2,982例(6.4%),脱臼814例(1.7%),その他491例(1.0%)である.
 2)外傷部位別にみると,下肢34,632例(75.0%),中でも足関節15,554例(33.7%),膝関節9,939(21.5%),下腿8,063例(17.5%)が多い.上肢は5,776例(12.4%),頭部顔面4,550例(9.9%),軀幹1,225例(2.7%)である.
 3)スキーによる頻発外傷の年次的推移とスキー用具の変遷をみると,safety-bindingの開発普及により,頭・顔面の切挫創が増加し最近のプラスチック製スキー靴の出現により,足関節部の」捻挫,果部骨折は著明に減少したが,下腿骨折特にboot-top fractureおよび膝関節外傷の発生率が増加して来ており,スキー外傷の傾向に大きな影響を及ぼしている.
 4)スキー外傷者に対して,スキー技術,身体状況,受傷時の環境因子,受傷時の状況,スキー用具,受傷後の処置などについてアンケート調査を行い,外傷の種類との関係について検討した結果,スキー用具の関与が大きいことがわかった.
 5)2次元光弾性実験で,足関節背屈位荷重で腰骨前縁下1/6部に圧縮応力が集中し,さらに前方転倒に際してスキー靴上端が支点となって屈曲力が加わるため,boot-top骨折が発生する.
 6)肩関節脱臼時の関節造影所見と予後との関係をみると,Capsular defachment typeは37.5%に再脱臼を認めたのに対し,Capsular tear typeでは一例も認められなかった.この結果から,脱臼時の造影でCapsular defachment typeの症例は,再脱臼予防のため3週以上の固定を必要とする.

「デサントスポーツ科学」第3巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 上村正吉,藤巻悦夫,栗山節郎,片桐知雄,関英正,森一義明,佐々木孝,高野吉則,宮岡英世,阪本桂造,黒木良克,川島弥,田代善久
大学・機関名 昭和大学

キーワード

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