動脈硬化に及ぼす持久性運動の効果
【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.3 Vol.3】
SHRラットに対して,自由運動は血圧上昇抑制作用があるが,強制運動ではむしろ血圧を上昇させる働きがあることをすでにわれわれは報告している.ところで,血管壁におけるコラーゲンたん白合成の高進は,高血圧による二次的現象と考えられており,コラーゲンたん白合成高進は,動脈硬化を促進すると考えられている.
そこでわれわれは,10週齢オスSHRラット(体重:190〜255g)を用いて,自由と強制のトレーニングが,安静時収縮血圧,大動脈壁コラーゲン含量,および血中脂質水準にどのような影響を及ぼすかを研究するために,本実験を計画した.
SHRラットを非運動群,自由運動群,強制運動群の3群にわけ,各群10匹ずつとした.強制運動のラットは,トレッドミル上を1日1時間,週5回,8週間走った.運動の強度は,最初の1週が13.4m/minで,週ごとに速度を2.7m/minずつ増し,26.8m/minになった後は,トレーニング終了までこの速度を保つようにした.
自由運動は,水車式運動装置で行わせた.
トレーニング終了後の各群の平均体重は,3群間に差はみられなかった.
自由運動走行距離は,トレーニング開始後6週間で7.8km/日と最高になり,以後ほぼ同じ値を示した.
トレーニング終了後,Soleus筋のSDH活性を測定した.非運動群,自由運動群のSDH活性は,それぞれ6.56±0.17,6.74±0.23μmoles/g/min(mean±SEM)であり,強制運動群は8.37±0.30μmoles/g/minで,他の2群よりも顕著な増加を示した(p<0.01).
SHRの平均血圧は,トレーニング終了時点において,非運動群,自由運動群,強制運動群それぞれ202.1±4.8,197.6±5.1,205.7±3.7mmHgであった.また,トレーニング前と比較して,トレーニング終了時には各群の血圧上昇率は,それぞれ15.0,12.0,20.0%であり,自由運動群と強制運動群の間に有意な差がみられた(p<0.05).
大動脈壁の総たん白含量は,3群とも250mg/gtissue前後と,ほぼ同じ値であった.
大動脈壁におけるtissue100mg当りのコラーゲン含量は,非運動群が102.2±3.1mg/gtissueに対し,自由運動群は96.5±2.0mg/gtissueであり,強制運動群は104.1±1.9mg/gtissueであり,自由運動群と強制運動群との間には有意差があった(p<0.05).
また,大動脈壁における総たん白中に含まれるコラーゲン含量も,同じ傾向を示した.
自由および強制のトレーニングにより,血中の中性脂肪,総コレステロール濃度の著しい低下効果が観察された.
また,HDLコレステロール濃度も,総コレステロール濃度と同様,減少する傾向を示した.
以上の結果から,高血圧によって引き起こされる動脈硬化の改善のためには,運動の質のちがいを考慮することが重要であることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」第3巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
そこでわれわれは,10週齢オスSHRラット(体重:190〜255g)を用いて,自由と強制のトレーニングが,安静時収縮血圧,大動脈壁コラーゲン含量,および血中脂質水準にどのような影響を及ぼすかを研究するために,本実験を計画した.
SHRラットを非運動群,自由運動群,強制運動群の3群にわけ,各群10匹ずつとした.強制運動のラットは,トレッドミル上を1日1時間,週5回,8週間走った.運動の強度は,最初の1週が13.4m/minで,週ごとに速度を2.7m/minずつ増し,26.8m/minになった後は,トレーニング終了までこの速度を保つようにした.
自由運動は,水車式運動装置で行わせた.
トレーニング終了後の各群の平均体重は,3群間に差はみられなかった.
自由運動走行距離は,トレーニング開始後6週間で7.8km/日と最高になり,以後ほぼ同じ値を示した.
トレーニング終了後,Soleus筋のSDH活性を測定した.非運動群,自由運動群のSDH活性は,それぞれ6.56±0.17,6.74±0.23μmoles/g/min(mean±SEM)であり,強制運動群は8.37±0.30μmoles/g/minで,他の2群よりも顕著な増加を示した(p<0.01).
SHRの平均血圧は,トレーニング終了時点において,非運動群,自由運動群,強制運動群それぞれ202.1±4.8,197.6±5.1,205.7±3.7mmHgであった.また,トレーニング前と比較して,トレーニング終了時には各群の血圧上昇率は,それぞれ15.0,12.0,20.0%であり,自由運動群と強制運動群の間に有意な差がみられた(p<0.05).
大動脈壁の総たん白含量は,3群とも250mg/gtissue前後と,ほぼ同じ値であった.
大動脈壁におけるtissue100mg当りのコラーゲン含量は,非運動群が102.2±3.1mg/gtissueに対し,自由運動群は96.5±2.0mg/gtissueであり,強制運動群は104.1±1.9mg/gtissueであり,自由運動群と強制運動群との間には有意差があった(p<0.05).
また,大動脈壁における総たん白中に含まれるコラーゲン含量も,同じ傾向を示した.
自由および強制のトレーニングにより,血中の中性脂肪,総コレステロール濃度の著しい低下効果が観察された.
また,HDLコレステロール濃度も,総コレステロール濃度と同様,減少する傾向を示した.
以上の結果から,高血圧によって引き起こされる動脈硬化の改善のためには,運動の質のちがいを考慮することが重要であることが示唆された.
「デサントスポーツ科学」第3巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 | 樋口満,橋本勲,山川喜久江 |
---|---|
大学・機関名 | 国立栄養研究所 |
キーワード