信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF サッカーのキック力に関するバイオメカニクス的研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.4 Vol.4

 結語

 本研究は,サッカーのインステップキックにおけるperformanceを規制する因子として,これまでに検討されていなかった等速性筋出力に着目し,ポールスピードとの関係について若干の検討を行った.その結果は以下のとおりである.
 1)サイベックスを用いて測定した脚伸展動作の等尺性筋力とポールスピードについては,r=0.935という高い相関が認められた.
 これは,脚伸展力が熟練者におけるインステップキックのperformanceを規制する客観的尺度になりうることをかなりはっきりと示していると考えられる.
 2)脚伸展動作の等速性筋出力とボールスピードについては300,240,180,120,60°/secという各測定速度に相関が認められた.なお,測定速度60°/secという低速度ではr=0.886で相対的に最も高い相関係数が,300°/secという高速度ではr=0.682で最も低い相関係数が得られた.
 これは,ポールスピードにはパリー発揮条件としてロー・ギア・パワーの因子がかなり影響しているという傾向を示したといえる.
 3)小さい動作でキックするときのphysical resourcesの因子をみるために,踏み込み距離を0(no step),30,60,90,120,150cmと自由(max)というように変化させたときのボールスピードを等速性筋出力との関係をみた.その結果,no step,150,maxの踏み込み距離と300°/secを除く各測定速度の間に有意な相関係数が得られた.
 これは,小さな動作で爆発的なキックをするときは,動的な筋力がかなり必要であることを示しているといえる.
 4)日本代表クラスの選手は,等尺性筋力,等速性筋出力,ポールスピードともすぐれていた.また,他の被検者と筋出力が同じでも,ポールスピードがすぐれている傾向を示した.

「デサントスポーツ科学」第29巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 戸苅晴彦*1, 磯川正教*2, 大橋二郎*1, 大串哲朗*3, 米田浩*4
大学・機関名 *1 東京大学, *2 東京都立大学, *3 上智大学, *4 日大桜丘高校

キーワード

インステップキック脚伸展力等速性筋出力ボールスピード等尺性筋力