信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 握りに関する基礎的研究 ―発育に伴う手掌形態の特徴―

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.4 Vol.4

 緒言

 近年,児童・生徒の体格は向上しており,それに伴う児童・生徒の使用する机・椅子などの高さの配慮などは行き届いている.しかし,体育・スポーツ用具の中で,握ることに関連した用具についての配慮は見過ごされていると思われ,その基礎的資料も不十分のようである.
 人間工学的にみたとき,ヒトの上肢の空間リンク機構の自由度は27で,そのうち約20が手部に集中しているといわれている4).また,発育発達の見地からみたときヒトの筋活動の発達は粗大な筋活動から微細な筋活動に進み,部位的には頭部から下肢へ,上腕そして手へと発達する経路をたどるとされている7).筋運動を支配する大脳の運動領をみても,手掌に関係する領域は広く,それは筋活動の中での手の重要性を示すものと解釈されている8).
 このように,重要な役割をになう手の握りの研究に関しては,増田ら6)のゴルフのグリップの握りに関する報告,圓尾2)の指尖把持力の分析研究,今井8)の指尖圧の研究,そしてBowers1)の手長や指長などとが握力と相関関係があると報告した研究などが挙げられる.
 しかし,体育・スポーツの領域において,用具を取り扱う時に,握りが重要視されているにもかかわらず,手掌あるいは握りに関しての研究は少ない.
 著者らは,さきに握りに関する研究1 5)として,大学生の手掌形態,手掌のスポーツ特性および握り棒の太さに対する選択対応について研究し,報告した.
 今回は,発育発達に応じた体育・スポーツ用具のグリップについての太さを求めるときの基礎的資料を得るために,発育発達期にある小学生・中学生・高校生の男女を対象に,手掌の形態を中心として測定を行ったので,その結果を報告する.

「デサントスポーツ科学」第15巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 遊佐清有*1, 片尾周造*1, 谷嶋二三男*1, 鎌田章*2, 植田三夫*2, 前岡考行*2, 鈴木昭子*2, 斉藤直樹*2, 小松幸円*2, 宮崎重勝*2, 岩下聆*3, 池田伊雄*4, 佐藤誠治*5
大学・機関名 *1 横浜市立大学, *2 神奈川大学, *3 聖マリアンナ医科大学, *4 鎌倉市立第一小学校, *5 神奈川県教育委員会

キーワード

手握形態手掌手の握り指間角度指環囲手掌面積握力