信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 乳・幼児の運動機能の発達を規定する要因の検討

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.5 Vol.5

 緒言

 高度経済成長政策のもとで昭和30年代の後半から,日本の社会は大きく変容しはじめ,特に昭和40年代には,人びとの生活環境や生活構造が急激に変化した.例えば,子どもの周辺を考えると,人口の都市集中によって広場や空地が減少し,モータリゼーションによって子どもたちは道路からも追われるなど,心身の発達に極めて重要な意味をもつ遊び場を失った.また,コミュニティの崩壊や人口流動の激しさに伴う近隣関係の希薄化,核家族化や新家族計画の影響による少子,塾やけいこごと通いの一般化は,遊び仲間を得られなくしたり,少数化し,さらに,かつてのような異年齢集団より同年齢集団を多くして,集団内の人間関係構造も大きく変化させ,子どもの遊び文化や人間関係,社会性に大きな影響をもたらした.さらに共働き家庭の増大,電機器具の普及による生活の合理化,TV視聴時間の増加,人びとの行動基準となる価値の多元化と欲求の多様化など,子どもを取り巻く生活環境や遊戯環境は激変した.
 このような環境の変化は,当然子どもの身体,精神,社会性に大きく影響し,それぞれに社会的問題をひきおこしている.
 こうした背景のもとで,幼児の運動能力1,2)やその発達に関する研究3,4,11~13,16,21)や,幼児の運動経験が知的能力に及ぼす研究8),運動機能と知能や言語との関係19,20),運動能力の発達を促す方法の検討5,6,10,17),運動能力の地域差の研究15),あるいは,幼児の運動能力の測定法の研究7,9,22)など,幼児の運動機能とかかわる研究が社会的要請ともかかわって多く出されてきた.しかし,いずれも,4歳児以上であるか,年少児の場合は少数標本であるなどの限界を持っている.したがって,運動機能と生活状況や遊戯環境との関係を扱った多数標本の広範な研究が期待されているにもかかわらず,ほとんど報告されていないのが実状である.
 そこで本研究では,多数標本から乳・幼児の運動機能の実態やその発達を規定する要因を,生活状況や遊戯環境,遊びの状況その他からとらえ,検討を試みた.

「デサントスポーツ科学」第5巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 丹羽劭昭*1, 奥真由子*1, 坂上恭子*1, 竹垣幸子*2, 林紀代*3
大学・機関名 *1 奈良女子大学, *2 育徳保育園, *3 滋賀女子短期大学

キーワード

幼児運動能力エネルギー系サイバネティックス系