信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 水泳学習における動作フィードバックトレーニングの応用

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.5 Vol.5

 まとめ

 平泳ぎのキックにおいて推進力を得るうえで重要な足関節の背屈動作を習得させるために,平泳ぎ未習得の大学生および小学生を対象として,従来の指導者の視覚的情報をもとにした指導者による動作矯正トレーニングを行なう群(C)と,従来の指導法に加え,足関節角度を検出・評価し,直接被験者に対し,即時に聴覚情報としてフィードバックするトレーニングを同時に行なう群(E)のトレーニング前後の足関節の角度変化ならびに筋電図パターンから,平泳ぎのキック動作矯正における聴覚的フィードバック・トレーニングの効果についいて検討を行なった結果,以下の点が明らかとなった.
 (1)E群,C群ともにダトレーニング後は足関節角度は小さくなり,足背屈位を保ってキック動・作が行なえるようになった.この傾向は,C群よりE群に早期に認められた.しかし,E群では4回目のトレーニング前では,3回目のトレーニング後より足関節角度が大きくなる傾向を示した.
 (2)トレーニング後はE群,C群とも,下肢筋群に積極的な脚伸展を示すパターンが認められたが,キック期の足裏での水のキャッチに働く前座骨筋の放電パターンを指標として習熱の程度をみた場合,E群ではC群に比較してキック期に放電の認められる試行が多くなったが,強い放電が後半まで持続するパターンはC群に多く認められた.
 以上,E群およびC群の足関節角度変化ならびに前腰骨筋の放電パターンからみて,足背屈動作習得における初期段階では今回,E群に行なったフィードバック・トレーニングを加えた方法は,C群に行なった従来の指導法に比較して,有効なトレーニング方法になり得ることが明らかとなった.しかしながら,E群は,トレーニング中にはトレーナからの聴覚的フィードバック情報に依存する傾向が認められることから考え,これらのトレーニング効果をより確実に定着させるためには,E群に行なったトレーニング法とC群に行なったトレーニング法を併用した方がよいのではないかと考えられる.
 今後さらに長期にわたる追跡を行ない,トレーニング効果について分析・追求してゆく必要があろう.

「デサントスポーツ科学」第5巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 中山尚裕*1, 吉津正伊*2, 三和優*3, 田中知司*4, 松本幸三*5
大学・機関名 *1 福井県丸岡町立長畝小学校, *2 福井大学, *3 仁愛女子短期大学, *4 中藤小学校, *5 南越中学校

キーワード

フィードバック・トレーニング平泳ぎ足関節前脛骨筋