信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 産前産後における体力の変化と運動プログラムに関する研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.5 Vol.5

 緒言

 近年,生涯体育の重要性が,社会的に注目され,体育の生活化が叫ばれている.乳幼児期から老年期に至るまで,運動が人間生活に及ぼす効果についての研究も盛んである.
 特に,女性の生涯の健康生活に視点をおいた場合,妊娠,分娩の時期が,その後の健康生活の方向づけにかかわる分岐点として考えられるとするならば,女性にとって,妊娠,分娩が,永久的な体力低下に連なるか否かは,重大な問題であろう.
 一般に体力は,人間が効率よく活動していくために必要な身体能力,すなわち,防衛体力と行動体力を指しているが,妊娠,分娩に要請される体力面については,その多くが予備エネルギーによって消化されるという.妊娠,分娩に必要な最高の健康状態が,大変重要なことであることは,言うまでもない.
 産科領域における体力面の課題は,妊娠巾の体力の低下,分娩経過の遅速,分娩時苦痛の減弱など,医療的措置と関連して,最近特に産科指導領域,体育指導領域との協力により,妊婦の水泳,マタニティービクスなど盛んである.いずれも,安産や,産後の速やかな体力回復を目指そうというものである(もちろん,リスク妊婦は除いている).
 これらの大胆な試みの重要な課題は,個人による必要運動量の異なる点にあるようである.
 私共は,体力と分娩との関連性を検討するため,幸い医師の強力のもとに,妊娠から分娩後に至る体力の変化を追跡,分析してきた.その結果,体力の回復には,長期を要する体力要因があることや,産後の軽体操実施の結果,運動効果の顕著な体力要因や,ほとんど変化のみられない体力構成要素があるなどの知見を得た.しかしながら,その測定種目は十分とは言えず,特に母体の安全という見地が,医師の立場から保証される場合に限定され,長期にわたるステップの必要性が痛感された.
 今回の課題は,1)産後の体力回復の遅速に見られる体力要因の再検討,2)軽運動プログラムに必要な動きの分析,3)妊産婦のための体力基準値の作成などであるが,1),2)については,継続中であるが,従来の資料をもとに,1),3)について報告する.

「デサントスポーツ科学」第5巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 佐々木寿代*1, 山本勝昭*2, 徳島了*2, 白木静枝*3
大学・機関名 *1 精華女子短期大学, *2 福岡大学, *3 中村学園大学

キーワード

体力の変化軽運動産前産後運動プログラム