信州大学 繊維学部技術データベース

Research Seeds

PDF 冬季における運動実施時の安全確保に関する基礎的研究

【大分類:7. デサントスポーツ科学 小分類:7.5 Vol.5

 要約

 本研究では,急激な環境温度の変化(とくに低温側の場合)が運動時の生体反応に及ぼす影響を把握することにより,冬季の運動実施時の安全確保のための基礎的資料を得ることを目的とした.すなわち,6名の被験者を25℃下で椅座安静状態を80分間保持させ,その後5,10,25℃の各温度条件下で自転車エルゴメータを用いたVO₂maxの40%および60%程度の2種の運動並びに椅座安静をそれぞれ60分間実施させ,その間心電図,心拍数,酸素摂取量,収縮期血圧,直腸温,平均皮肩温を測定した.得られた結果の要約は次のとおりである.
 1) 温度が低温側に変化した場合には,一般的傾向として,収縮期血圧および酸素摂取量の上昇が運動初期に著しくなることが認められ,とくにその傾向は温度較差が大きく,また軽運動の場合において顕著であった.
 2) 温度が低温側に変化した場合,心拍数は5℃下での安静時を除き,安静時,運動時いずれの場合にも25℃下の場合より少ないことが認められた.
 3) 安静時,運動時のいずれの場合にも,心電図記録から求めたSTの変化,PQ,QT,QTc時間には環境温度による影響はほとんど認められず,PQ,QT,QTc時間と心拍数との間には有意な相関関係が認められた.
 4)安静時,運動時のいずれの場合にも,直腸温の変動度には環境温度の影響はほとんど認められなかった.また,平均皮唐温の上昇あるいは低下は環境温度のレベルに相呼応した.
 5) 冬季における運動実施時の安全性を考える際には,収縮期血圧の初期上昇が一つの指標となり得ると推定できる.

「デサントスポーツ科学」第5巻/公益財団法人 石本記念 デサントスポーツ科学振興財団
研究者名 井上芳光*1, 村上宏*1, 中尾美喜夫*2, 松下健二*3, 荒木勉*3
大学・機関名 *1 神戸大学, *2 大阪経済大学, *3 兵庫教育大学

キーワード

環境温度生体反応運動実施時の安全収縮期血圧